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目次

CSカレッジ主催イベント「BRIDGE」前夜祭 DAY0 文字起こしレポート:カスタマーサクセス業界で活躍する面々が語る、立ち上げ期の振り返り

小父内 信也 氏 (以下、小父内)
株式会社Asobica 取締役CCO
2010年、名刺管理システムのSansan株式会社に入社。データ化部門責任者を経て、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーへ。現在は、カスタマーサクセスオートメーションツール「coorum(コーラム)」を提供する株式会社Asobicaの取締役CCOとしてカスタマーサクセス部門を統括している。
山田 ひさのり 氏 (以下、山田)
Sansan株式会社 カスタマーサクセス部 シニアカスタマーマーケティングマネジャー
大学卒業後、ゲームプログラマーとしてキャリアをスタート。 KLab株式会社でモバイルゲームのプロデューサーや新規事業開発の部長を歴任後、 2013年、Sansan株式会社に入社。 プロダクトアライアンスマネージャーとしてSansan APIの外部公開や、Dynamics CRM / Office365/ kintone / Marketo などとのSansan連携を実現。 その後カスタマーサクセス部にて同部門の全体戦略の立案を担当している。 2020年7月、Sansanのカスタマーサクセスのノウハウを集約した『カスタマーサクセス実行戦略』を著作
稲船 祐介 氏 (以下、稲船)
株式会社SmartHR カスタマーサクセスグループマネージャー
大学卒業後、給与計算ソフトや院内物流システムのUI開発に従事。 その後、ウェブディレクターとして大手クライアントのウェブサイト制作やスマートフォンアプリケーション開発のディレクションを担当。 2012年より企業のWebマーケティングを支援するSaaSプロダクトのPMやカスタマーサクセスチーム立ち上げを経験したのち、2019年1月に株式会社SmartHRへ入社。 2020年1月よりカスタマーサクセスグループのマネージメントを担当。
丸田 絃心 氏 (以下、丸田)
CSカレッジ/株式会社ABEJA
新卒で外資系投資銀行に入社し、証券アナリストとしてデータ分析業務に従事。その後ネット広告代理店を起業し、法人営業やマーケティングコンサルを担当。人材/組織開発コンサルを経て、ABEJA(現職)でカスタマーサクセスを立ち上げ、様々な小売企業様の店舗経営を支援。カスタマーサクセスの講師や外部顧問などを多数歴任。

はじめに

丸田:
今回のカンファレンス「BRIDGE 2020」ですがDay1とDay2でテーマが異なります。

Day1では、CSを深めるというテーマで、カスタマーサクセス単体でいかに成果を出していくかというところで、ノウハウを学んでいただくことを主眼においています。

Day2では、それをきちんと組織に広げていくためのプロダクトやマーケとの連携など、全社的にCSを広げていくにはどうしたら良いのかというテーマで学びを深めていただく流れになっています。

本日のDay0(前夜祭)ではまだまだCS組織が立ち上がったばかりという方も多くいらっしゃると思いますので、「CSの立ち上げ期はどうすすめるべきか」を皆さんとディスカッションできればと思います。

また、この前夜祭は「あなたにとって、CSってなんですか?」というテーマを掲げており、これを一緒に考えていきたいと思っております。

登壇者の皆様は、これまでの経験や取り組みの中で培ってきたCSの経験があると思いますので、それを語っていただき、視聴者の皆様には、自分にとってのCSを模索しながら経験豊富な登壇者の方の話を聞いてもらえればなと思います。

前夜祭イベレポ1の代替テキスト

立ち上げ期に気をつけるべきこと

丸田:
皆さん、CSの立ち上げ期はかなり悪戦苦闘されたのではないかと思いますが、振り返って、気をつけるべきことや意識すべきことを教えていただけますでしょうか。

小父内:
私の所属するAsobicaは、現在coorumというカスタマーサクセスツールを提供しており、まさに今、CSの立ち上げを行っています。元々SansanでもCSに関わっていましたが、今と昔では違う部分がたくさんあります。

一方で、徹底的に顧客と向き合うことは一貫して非常に重要だなと思います。今と昔で変わったのは、顧客との関わり方の中でデータを取っていくことですね。これは非常に重要です。取れるツールが進化しているおかげで、かなりデータを取りやすくなってきたので、意味のあるデータを取得して、トライ&エラーで進めていくことが大切だと思います。

丸田:
立ち上げ期に「顧客に向き合う」ことが大事と言いますが、その向き合い方はどうするのが良いのでしょうか。また、顧客データが溜まりきっていない立ち上げ期では何のデータを見ていけば良いのでしょうか。

小父内:
ハイタッチした上で、「これだと考える仮説」を立てることが重要だと思います。

立ち上げ期では、CSは孤独になりやすいですが、信じて突き進むことがすごく重要です。最初から答えを出すことは難しいので、トライ&エラーで導き出すしかないですね。

2つ目の質問のデータについては、サービスやプロダクトによって見るデータは変わると思いますので、一概には言えないなと思います。皆様はいかがでしょうか。

山田:
一概には言えないと思います。事業によって、どこが顧客のサクセスや事業に効くのかの変数や因子が異なるので、ビジネスモデルを正しく理解することが非常に重要だと思います。

結構深く聞かないとわからないので、自社の事業の変数や因子の関係性やメカニズムを解明するステップが必要で、人に聞いても出てこないと思います。見るべき数値はなにか?を聞くよりも、どういうプロセスでそこに迫っていったかを聞いた方がよいと思います。

丸田:
なるほど。では、皆さんの会社では顧客のどのような数値を追いかけていますか。

稲船:
SmartHRの場合は、オンボーディングの指標を見ています。フェーズによって、少しずつポイントは変えますが、常に指標には入っています。また、機能の活用度やウェビナーへの参加率など、様々な指標を見ています。ただ、CSの立ち上げのタイミングでは、顧客が機能活用のファーストステップを踏めているかどうか、を見ていくのが重要で、その点は立ち上げ期においてどの会社も共通するのではないでしょうか。

これは失敗の話ですが、私が立ち上げた時は、色々なデータを見た結果「ここまでやって欲しい」という指標を現状から遠いところに置いてしまって、なぜ顧客はその指標までたどり着けないのだろうと壁にぶつかったことがありました。この経験から、もっと手前のステップから確認していかないと、顧客がどこで躓いているのかが見えづらいというのがありますね。

前夜祭イベレポ2の代替テキスト

小父内:
Sansanの場合はわかりやすいかもしれません。名刺を何枚スキャンしたとかをKPIにしてましたよね。

山田:そうですね。稲船さんがおっしゃったように、プロダクトの活用に向き合うところからがスタートだと思います。だんだん、それでは足りないねとなると思うので、まずはそれを最初にやっていく形で良いと思います。

丸田:
共通見解として、立ち上げ期にきちんと機能が使われているか、きちんとオンボーディングフェーズが進んでいるかを見るのが大事ということですね。

オンボーディング時に気をつけることや意識されていることはありましたか?

山田:
顧客の成功指標をどうするかは悩んでいました。Sansanは3回ぐらい変わった記憶があります。半年や3ヶ月のスパンでPDCAを回していくのが大事ですね。

仮説を立てて、「これだ」と思うことがあっても、それを信じすぎないスタンスは大事かなと思います。

小父内:
プロダクトの成熟度によって指標が変わることはありますよね。

山田:
ありますね。また、仮説が間違っていた場合、取るべき顧客ではなかった場合、プロダクト自体の機能が増えた場合など、色々な因子があるので、Sansanは半年に1回変えている気がしますし、変えないといけないと考えています。

丸田:
オンボーディングの定義と指標と水準は決めた方がよいが、状況を踏まえて、見直しをするのが大切ということですね。

山田:
言葉にするとそうですね。ただ、それをやるのは忍耐が必要で難しいです。試行錯誤していくと、だんだん綺麗に整理できるようになるので、そうなっていくまで頑張るしかないです。

稲船:
SmartHRのサクセス立ち上げ期では、そもそもオンボーディングという言葉がありませんでした。私がSmartHRにジョインした時はオンボーディング専任のチームが立ち上げをやっていて、大量のデータと経験値が溜まっていました。皆さん、最初から型を作りたくはなると思いますが、大量のデータと経験が溜まってから、初めて型が出来るので、時間と根気が必要です。

しくじり先生に学ぶ

丸田:
SmartHRのオンボーディング専用チームは一度なくなったかと思います。上手く機能していると思ったのですが、なくした理由はなぜでしょうか。

稲船:
型化が出来るようになったことと、CSのキャリアを考えた結果ですね。CSをチームとしてより強くしていきたいという思いがあり、チーム体制を変えました。

一方で、オンボーディングに特化したチームを作った方が良いのでは?という話もあるので、一度なくしたから、もう作らないということはなく常に議論しています。

丸田:
皆さん、初期の頃のあるある失敗談などはありますか。

稲船:
目標をたてるのが早すぎたという失敗を経験しました。最初に設定する目標数字は根拠などないにも関わらず、それを達成するために色んな改善をやっていました。しかし、これによって、根本の原因がなんだったのかを把握しにくくなってしまいました。根拠のない目標数値でも目標として設定すれば、それを達成するためにみんなががんばりますが、そうするとチームは疲弊します。振り返ってみると、目標数値を検証するフェーズが必要だったかなと思います。

小父内:
セールスからCSへのバトンタッチはすごく難しいし、重要だなと思っています。セールスとのバトンタッチやサポートとの連携を考えると関係値を築くことが重要です。

個人的な失敗談としては、Sansan時代に、データ化部門からCSへ異動した際、プロダクトの知識が不足していたことです。当たり前のことですが、キャッチアップしてから顧客へ向き合わなければいけなかったなと思います。これは基本ですがすごく重要です。

丸田:
Gainsightの本に、CSが最初に持つべきものは、「顧客理解・ドメインナレッジ・プロダクト理解・顧客に寄り添う力」というのがありましたよね。

プロダクトに精通して、顧客の期待値調整もして、社内引継ぎもきちんとやるのが大事ということですね。小父内さんはSansan時代から今までEightコミュニティに携わってきたことや、現在Asobicaさんで提供されているカスタマーサクセスツールであるcoorumがコミュニティ機能を持っていることもあり、コミュニティにも精通されていると思います。CSだけではなく、コミュニティの立ち上げ時の失敗談もお伺いできますでしょうか。

小父内:
Eightのコミュニティ立ち上げ時に、顧客をお客様扱いをしてしまって、距離感が離れてしまった失敗経験があります。アンケートで聞くと、顧客はもっと対等でフラットな扱いを求めていたことがわかりました。この経験から、コミュニティのユーザーは、顧客ではあるけれども、それ以上に仲間だなと気付きました。そこに気付いてからは、仲間からすごく支えられるようになりました。

個人的に、コミュニティは作って準備して置いておくものではなく、一緒に生み出していくもの・築いていくものだと思っています。

前夜祭イベレポ3の代替テキスト

丸田:
山田さんはサクセスだけなく、カスタマーマーケティングの立ち上げをされていると思いますが、その文脈での失敗談はなにかありますか。

山田:
私の場合は、マーケティングとオペレーションの両方から入りました。マーケティングをやろうとすると、オペレーションの整理が必要だったので、メールのデリバリーシステムを入れるのと、顧客を把握するためのデータ基盤を整備するのを同時に進めていました。

そこでの反省点は、成果を細かく出すべきだったなと思います。チームが2,3人であれば、何を考えているか言わなくとも伝わりますが、私が関わり始めた時にはCSチームに2,30人いたので、本来はチームメンバーに成果の指標を明確に伝えて、それに対する手応えを与えないといけなかったと思います。しかし、それを与えないまま進めてしまったので、チーム内の同意を得られず、想定していた形で動いてもらえなかった経験があります。特に、大きな会社でCS組織を立ち上げられる方は、そのあたりを注意されると良いかと思います。

丸田:
今回のBRIDGE2020への参加者の約25%が大企業の方なので、大手の中でどうやって組織を変えていくかは関心が高いと思います。

あの時に戻ったらどうする?

丸田:
山田さんにお聞きしたいのですが、もしあのときに戻ったら、組織がうまく回るための働きかけとして何をされますか?

山田:
大企業に導入するタイプのSaaSだと、e-ラーニングの仕組みを使って立ち上げをするのが今のトレンドですが、1年前に取り入れた時はまったく使われずにお金だけ無駄になったという苦い経験があります。なので、今過去に戻ったとしたら、真っ先に稲船さんのところに聞きに行きます(笑)。

CS界隈にいると情報発信も盛んですし、ある程度、その分野のオーソリティの方がいらっしゃるので、聞きにくのがよいかなと思います。変に縮こまらず、いきなりSNSのDMで困っていますと連絡しても良いと思います。CS界隈の人はみんな良い人で、知識の啓蒙に一生懸命なので教えてくれると思います。

前夜祭イベレポ4の代替テキスト

丸田:
では、山田さんも聞きにいくという”e-ラーニングの祖”である稲船さんに、大企業向けのe-ラーニング施策について、お伺いしても良いでしょうか。

稲船:
まだまだこれからだなと思っています。時代的に、オンラインや非対面化が進んできているので、そのトレンドに後押しされているのはありますね。

あとは、CSマネージャーがコンテンツの力を信じることは大事だなと思います。これからのオンライン化や非対面化を考えると、これまでやってきたやり方を変えないといけないので、私たちはコンテンツを信じて、PDCAを回し続けていかなければならないと思っています。

丸田:
小父内さんは、過去に戻ったらみたいなことはありますか?

小父内:
CSだったら、スプレッドシートでも良いから顧客データを押さえておくようにと思います。例えば、先程の引き継ぎの件でも、担当変更などで、情報がわからなくなって探す時間は無駄ですよね。

顧客も「それ前に言いました」となると冷めてしまいますし。無駄なデータもあると思いますが、とにかく残しておけと自分に言いますね。

丸田:
コミュニティの方でもデータを溜めておくのが大事なのでしょうか。

小父内:
そうですね。コミュニティは特にKPIが難しかったり、抽象的になりがちですが、顧客のハブになる非常に重要なポイントのなので定性的なことでも、溜めておくのは大事です。

最近のコミュニティ

丸田:
そんなコミュニティを、立ち上げ期にどうやって顧客と一緒に生み出し、育てていくのかを聞きたいです。立ち上げ期には、どういったことを意識されていましたでしょうか。取っておいて良かったデータなどはありますか。

小父内:
Eightの場合は、立ち上げ前から顧客の声の数を集めていました。フィードの投稿数など定量的に測れる部分以外に、1on1で声を集め、定性も含めて顧客のロイヤリティを測っていました。

丸田:
多くの声を出してくれる顧客がロイヤリティが高いということでしょうか。

小父内:
声のなかにはクレームもあるので、一概にロイヤリティが高いと言い切れない部分もあります。しかし、わざわざクレームを言ってくれるというのも想いが強いということですよね。本当に感謝すべきことだなと思います。あとは、どれだけ時間を割いてくれているかというのは一つの指標になるので、オフラインやオンラインでの参加率は重要です。

丸田:
コロナで1番大きく変わったのは、対面での接触が出来なくなったことですよね。その影響を大きく受けている一つに正にコミュニティがあるかと思いますが、そんなコミュニティをカスタマーサクセスの文脈で支援しているAsobicaの知見をお聞きしたいです。例えば、オンラインコミュニティを立ち上げる方法などはいかがでしょうか。

前夜祭イベレポ5の代替テキスト

小父内:
コミュニティを成功させるノウハウは非常に沢山あるのですが、ここで一つ上げるとすれば、「いかに巻き込むか」だと思います。私は「コミュニティを作る」という言葉を好きではありません。なぜなら、既に準備されたものに人は熱狂しないからです。単に作るだけではなくて、「一緒に作る」ことでロイヤリティは上がるし、主体性が上がっていくと思います。

そのために、2on2をやってくださいと言っています。もちろん1on1でも良いのですが、関係値を築くのは2on2の方が客観性をもって進められと思います。なお、この時の自社の2人というのは、コミュニティの管理者に加え、カスタマーサポート責任者であったり、広報担当者だったり、マーケ担当者だったりと社内のサクセス以外のメンバーを巻き込むのがおすすめです。他の部署を巻き込めるだけでなく、客観的な視点も含め、全く違う視点を得られます。

丸田:
ステークホルダーの数を増やすことで、議論の客観性を保てるということですね。

先ほどの「単純に与えるだけじゃだめだ」という話ですが、コミュニティが提供する価値を消費ではなくクリエイティブに寄せていくことで、受け身ではなく参加をしてもらえるということですね。

小父内:
そうですね、積極的にフィードバックをいただけますし、守ってもいただけます。また、1番感じたコミュニティの成果は、インナーブランディングです。こんなにファンがいるんだというのは、社内に対して良い効果を生み出します。自社内には、自社のサービスが顧客にどう喜ばれているのかを明確に知らないメンバーは結構多く、そういったメンバーに顧客が喜んでいるという姿を見せてあげることはあらゆる視点から非常に重要です。

丸田:
そのあたり、Sansanは上手くやっているのかなと思いますが、いかがでしょうか。

山田:
Sansanでは、カンファレンスに登壇いただいたロイヤルカスタマー方のスピーチがとても良かったので、その方をSansaの納会に呼んで全社員の前でスピーチをしてもらったことがあります。そのスピーチに非常に多くの社員が感動し、その結果「我々の会社はDXの最初の一歩を担っているんだ」という意識が全社員に芽生え、会社としても強くそれを意識するようになりました。この出来事を通して、Sansanの掲げるミッションである「イノベーションを生み出す」を実感出来たと思います。

特にフロント以外のメンバー(バックオフィスや開発チームなど)は、実際に自分たちが提供しているプロダクトが、どのようにビジョンを体現しているかを感じづらいので、ロイヤルカスタマーの話を聞くのはかなり効果的だと思います。

丸田:
こういった顧客の声を社内に還元する取り組みは、SmartHRでもされていますでしょうか。

稲船:
コミュニティとは異なりますが、社内には「CS良い話ストック」というslackチャンネルがあります。顧客から言われた良い言葉がSlackに投稿されたときに、特定の決まったスタンプを押すとそのチャンネルに自動的に流れるようになっていて、全社員が見られるようになっています。元々、CSに集まる顧客の声を全社に届けきれていないなということで、この仕組みが始まりました。

正しい顧客とは

前夜祭イベレポ6の代替テキスト

丸田:
顧客から出るニーズが全て正しいとは限らないし、全てが正しい顧客とは言えないと思います。しかし、立ち上げ期はビジネスを成長させないといけない、売上を立てないといけないという側面もある中で、正しくない顧客だった場合、皆さんどのように対処されていましたか?

稲船:
最初は「正しさ」がわからないので、全て取っていました。

そこから先、正しい顧客象が見えてきたときは、仮説検証を繰り返しました。現状のプロダクトが提供できるものをニーズにしてくれている顧客はもちろんですが、もう少しここが足りていないというのを言ってくれる顧客も大切だなと思います。

丸田:
クレームやダメ出しは一種の愛ですもんね。coorumも、今そういうフェーズなのではないでしょうか。

小父内:
そうですね。選べないです。一方で、営業時にミッションにフィットするかどうかは見ています。あとは、大きな声に引っ張られすぎることなく、一顧客として対峙するということも冷静にやっています。

一つ、皆様に聞きたいのはチャーンについてです。立ち上げ期は全ての顧客を取りに行くことになるため、ある程度のチャーンは発生しても仕方がないと思っていますが、皆さんいかがでしょうか。

稲船:
「チャーンは仕方がない」と出来ている組織は少ないと思います。SmartHRの場合も目標にチャーンレートを置いていたので、正しい顧客でなかったとしても、なんとか止めようとしていただろうなと思います。

山田:
最初は、チャーンしないように頑張って、それでも止められない顧客は「仕方がない」と割り切るのはありだと思います。

小父内:
「正しくない」と簡単に言うなということですよね。

丸田:
穴のあいたバケツの理論がありますが、最初はザルで水を通してみて、どの顧客が溜まる顧客なのかをみていくのが良いのではないかということですね。今、成熟期・拡大期にあるSmartHRの場合、正しくない顧客はどういうセグメントの方でしょうか。

稲船:
現状、正しいとか正しくないという感覚とは少し違いますね。例えば、オンボードの難易度が高くそれにかかる期間が長かったり、周辺のシステムとの連携が複雑な顧客に対しては、正しい、正しくないというよりは、「未経験のゾーンに踏み出す」という捉え方をしています。

その上で、「その未経験ゾーンに踏み出すタイミングは今なのか」を考えているので、どのフェーズであっても少しずつ半歩前に踏み出していくチャレンジは続いていくんだろうなと思います。また、組織が大きくなると、プロダクトや会社としてそこにいくのかという意思決定も出てくるようになるので、そこも踏まえて判断しています。

山田:
私はもう少し現実的な話になります。申し込んでいただいているということは、ニーズがないということではないと思うので、どちらかというと期待値調整の話かなと思っています。

フィットしない期待値コントロールをしている場合は、正しくない顧客のように見えてしまうので、営業とのすり合わせの部分のPDCAを回していきます。組織としてそれが浸透していくと、最適化され、改善されていくと思います。

CS組織について

丸田:
次の話題で、CS組織についてお聞きしたいのですが、SmartHRとSansanのCS組織は40-50名いらっしゃるかと思いますが、Asobicaは今何名でCSをされているのでしょうか。

立ち上げフェーズで、CSのメンバーをいかに採用していくか、組織を作っていくかに対して、どのように取り組まれているか聞かせてください。

小父内:
今、CSチームは4名です。採用については、皆様もそうかなと思いますが、セールスのエースを引っ張ってきました。CSに必要なスキルは、顧客理解やプロダクト理解だという前提に立つと、分かりやすいのはセールスのエースですね。

丸田:
CSの経験というよりも、CSの業務に必要なスキルを持っているかどうかということですね。稲船さんは、CS組織を作る上で意識されたことはありますか。

前夜祭イベレポ7の代替テキスト

稲船:
小父内さんと同じで、セールスのエースが欲しいなと思います。理由は、CSとセールスは利害が合わないケースがあり、上手くコミュニケーションをとるのに時間がかかるからです。セールスのエース経験があるとその辺りを纏めるのが上手く出来るだろうなと思っています。ただし、セールスのエースはどこも欲しいので、簡単には実現しません。現実的な方法でいうと、セールスのエースの代わりになるのが、組織内のメンバーでハイタッチが上手い人だと思います。

山田:
チャットの質問で「CSの採用で苦戦している理由は」というものがきているので答えたいと思います。最近は、昔よりも苦戦していないですね。苦戦する理由は、「何をしているかわからない」というのが大きいと思います。CSのやっている仕事内容を、整理してくっきり語れるようになると採用は楽になるのかなと思います。

稲船:
私の場合、苦戦の内容が変わってきているように思います。CS組織が進んで、どんどん専門的なことをやっていこうとすると、今度は専門スキルを持った人たちがCS自体を知らないという状態になります。そうなると、まずはCSのことを知って魅力に感じてもらうことが必要になるなと思います。

初めの頃の採用は、CSにどういう人がマッチするのかもわかっていなかったですし、求人に「オンボーディングをやってもらいます」と書いても伝わらず、マッチしずらいというのはありました。

丸田:
山田さんのやられているカスタマーマーケティングやCS OPSは、まだ新しくて専門的な領域かなと思いますが、組織作りや立ち上げはどうされるのが良いのでしょうか。

山田:
カスタマーマーケティングやCS Opsが必要な時期は自然と分かってくると思います。

Sansanの場合は、既存顧客の数が増えてきタイミングであったり、事業をスケールさせるスピードをもっと早めたいという欲求が発生したタイミングになりますね。

カスマーマーケティングやCS Opsには、事業を前に進めるためのグランドデザインをひく能力が必要になると思います。大きな絵を描いてスケールさせていくことが求められるので、事業企画のような領域に近いかもしれません。大きな絵を描く人が一人は必要だと思った方が良いと思います。

感覚論だと、CSM出身だと顧客に寄りすぎるイメージがあるので、一歩引いた人が良いかなと思います。私の場合は、たまたまオペレーションから入ったので広い視野を持てていました。

これからのCSについて

丸田:
今までお聞きしたことを踏まえて、これからどういうCSをしていきたいというのはありますか。

山田:
Sansanの場合は、マーケティングやオンボードは型化が進んでいるので、今後はもっと明確なCSの事業貢献、すなわちエクスパンション等が必要になると思っています。企業の歴史が長くなって、既存顧客が増えていくと、継続的にタッチ出来ていない顧客がどうしても増えていきます。そこに対して、どうしていくのかがまだ未開拓なので、CSとしてどう向き合っていくのが当面の課題です。

丸田:
CSを通じて、守りだけではなくエクスパンションをしていけるのかということですね。

立ち上げ期でもチャーン削減とエクスパンションを課されている場合もあるかなと思いますが、そういう場合はどうしたら良いのでしょうか。

山田:
最大化させることから考えるのが良いと思うので、まだチャーンを減らせるのであれば、そこから取り組むのが良いと思います。

ただし、エクスパンション出来そうなタイミングに遭遇することはよくあると思うので、経験値をためて、来るべき時に備えていくのが良いと思います。

丸田:
小父内さんのところは、今はチャーンを防ぐフェーズでしょうか。

小父内:
そうですね。あとは、顧客の声をプロダクトへいかに早く反映させられるかというのを重視しています。日々CSは変わっていきますし、答えがないので、日本ならではのCSとはなにかを探しています。

丸田:
例えば、2,3年後のCSの姿はどういう風に今後変わっていくと思いますか。

小父内:
2つあります。

1つ目が、山田さんもおっしゃっていたように、今後はCS中心のビジネスになると感じています。それによって、相互の成長や成果に結びつく世界観がもっと強調されていくと思っています。

もう1つが、CSに効率化や最適化を求めるがあまり、このままいくと機械化しすぎるのではないかと危惧しています。おもてなしや日本ならではのCSを考えると、今後は、人らしさを感じられる、ぬくもりのあるテックタッチが生まれていくのではないのかなと思っています。

丸田:
Gainsightのイベントでもテーマがプロダクトサクセスとヒューマンタッチというものだったので、正にその通りだなと思いました。「CSが中心になって事業を作って、顧客の成功を実現して、それを事業に反映させる」というのは、CSが経営であるという話に直結しています。今回のイベントを「BRIDGE」と名付けたのも、CSが「事業を作る未来への架け橋」であれば良いなと思ったからです。稲船さんにも、これからのCSについてのお考えをお聞きしたいです。

前夜祭イベレポ8の代替テキスト

稲船:
テックタッチとハイタッチどちらもありますが、この顧客はここのゾーンだからどちらかのタッチというのではなく、必要に応じてタッチを変えられる状態を作りたいなと思ってチャレンジしています。

また、再現性のある手法への改善や、新プロダクトへの対応可能なスキルセットの確保、地方ユーザーへの展開をやっています。特に、地方ユーザーの場合だと、初めてのSaaSツールがSmartHRという顧客も多いので、「BtoB SaaSのCS」を通じて、良い経験・成果を感じていただくことで、顧客のDX推進のきっかけとなる存在を目指すべきだと思っています。

山田:
CSはチェンジマネジメントになると思います。納会に来てくださったお客様は象徴的ですが、顧客の働き方を変えられる存在であると思います。また、もっと俯瞰的に見ると、日本のIT化、DX推進は我々CSにかかっているなと感じています。我々が支えていくことで、日本全体を良い方向に持っていければと思います。

あなたにとって、CSとは

前夜祭イベレポ9の代替テキスト

小父内:
今のCSは「必然の結果」と感じています。今、この時代だからこそCSが面白いタイミングだし、大事になっているなと思います。

山田:
「三方良し」は、昔から日本で言われていることで、HiCustomerの高橋さんが言っていて、その通りだなと思いました。

もう一つは、「未来の作り手」と書きました。日本がデジタル先進国になるには、CSがもっと頑張らないとと思っています。部下の結婚式のスピーチで、「彼がCSでやっていることは国益になる」と言い切ったことがあり、本当にそう思っています。我々CSがやっていることは、一歩一歩日本を変えていっているなと感じているので、この言葉を書きました。

稲船:
「三方良しを実現するために必要な良心」と書きました。これは、チームメンバーに突然言われた「CSを一言で言うとなんでしょうか」という問いに対しての回答です。

顧客のためにもなるべきですし、事業継続、事業成長も必要です。そしてそれは非常に難易度が高いです。CSは悩みながら迷いながらも、その道に対して愚直に進んでいくことが必要なのかなと思います。

もう一つ書いたのが、「平等=SaaS、公平=CS」です。

SaaSは平等なサービスである一方、それが上手く使えない時にCSが活躍するかと思います。それをどんな顧客でも、公平に使えるようにする役割を担っているなと思っています。

丸田:
「自社と顧客の成功の架け橋」

自社の成功と顧客の成功の間に、イコールを置いてあげるのが大事だなと思っています。

三方良しにとても近いかなと思いますが、そういうものが今の時代だから必然的に生まれてきたんだろうなと皆様のお話を聞いて、共感しておりました。

この学びは、明日明後日のDay1・Day2に続いていきます。

小父内信也

執筆:小父内信也

株式会社Asobica CCO
2010年、名刺管理システムのSansan株式会社に入社。データ化部門責任者を経て、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーへ。現在は、株式会社AsobicaにCCOとして参画中。

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