180カ国/7億人を支えるDropbox ハイブリッド型カスタマーサクセスを大解剖!

2023-07-24 イベント

2021年12月21日に開催したオンライン対談イベント『180カ国/7億人を支えるDropbox ハイブリッド型カスタマーサクセスを大解剖!』では、Dropbox Japanよりエグゼクティブカスタマーサクセスマネージャーの小林健吾氏にご登壇いただき、株式会社Asobica取締役CCOの小父内信也氏がモデレーターを務めました。

今回イベントに参加できなかった方にもお楽しみいただけるよう、本レポートではイベントの内容をダイジェストでお届けします。

小林健吾 氏(以下、小林)
Dropbox Japan株式会社  エグゼクティブカスタマーサクセスマネージャー

小父内信也 氏
株式会社Asobica 取締役CCO

イントロダクション

小林:Dropbox Japan エグゼクティブカスタマーサクセスマネージャーの小林健吾と申します。

私はカスタマーサクセス(以下、CS)としてのキャリアの中で大きく分けて3つのチャプターを経験してきています。まずは日本のSansanで2年半ほど働いていた時期です。その頃ちょうど事業・プロダクトが一番グロースするタイミングで、毎年50%成長を続けるビジネスのCS組織をスケールさせていくフェーズで先頭に立って活動していました。

その後2年はシンガポールに行き、グローバル拠点の立ち上げを第1号CSとして担当しておりました。立上げ期だったため、CSという役割ではあったものの、実際にはマーケや営業、プロダクトも全て担当し、導入企業数が0社から120社くらいまで成長するところを経験しました。

そこから現職に移ったのですが、今回のポジションでは日系SaaSの海外事業担当→外資系SaaSの日本事業担当、ということである意味グローバル観点では対照的な立場を体験しています。今は日本のチームを中心にアジア全体のCSチームのスキル上げを図る、というのが主な役割となっています。

(小林さん作成資料より抜粋)

CSとしての私のキャリアの特徴を3つのタグで表現するならば、①日系SaaSと外資系SaaSの両方を経験している、②日本市場と海外市場の両方でCSを経験している、③立ち上げとスケールの両方のフェーズを経験している、という風にまとめられるかと思います。

会社概要

小林:次にDropboxのご紹介をします。Dropbox Inc. は2007年にアメリカのシリコンバレーで誕生したテック企業です。10年以上シングルプロダクトでやってきて、2018年の3月に上場、そこからは徐々にマルチプロダクトという違うステージに移行しつつあります。日本法人は2015年にオープンし東京と大阪に拠点を構えているのですが、コロナ禍にジョインした私は実はまだ数回しか行ったことがありません。Dropboxが新たに掲げている「Virtual First」というコンセプトを全員が体現し、在宅勤務でテレワーク中心の働き方をしています。

クラウドストレージだけじゃないDropbox

小林:プロダクトについて、Dropboxと聞いて最初に思い浮かべるのはクラウドストレージではないかと思います。おそらくクラウドストレージというジャンルにおける先駆け的存在として広くご認知いただいていると思いますが、実はそれだけではなく、Dropboxには色々な共有方法があります。

(小林さん作成資料より抜粋)

それらを使い分けることで生産性を高めながらセキュアに共有ができたり、ファイルを保存するだけでなく様々なコラボレーションをサポートする機能が充実していたりします。しかし、こういった面をほとんど知らないという方が多いのではないでしょうか。プロダクトでできることとユーザーが理解していることのギャップ、いわゆるコンサンプションギャップが非常に大きいプロダクトのため、この差を埋めるためにCSが介入する意義が高いプロダクトとなっています。

180カ国7億人のユーザー数

小林:Dropboxのユーザー数は本イベントタイトルにもあるように180カ国7億人以上です。ここまで大規模なのは、コンシュマー(B2C)側のユーザも含まれていることが大きな理由です。とはいえB2B企業様も相当数ご導入いただいており、導入企業様は現在45万社(※イベント開催時点)、Fortune500の56%の企業様がご利用下さっています。また、ホリゾンタルSaaSのため、業界・業種に関わらずあらゆるユーザ様にご利用いただいております。

以上がDropboxの会社・プロダクトの特徴です。

Dropboxのカスタマーサクセス

小林:そしてここからは今回のメインテーマであるカスタマーサクセスを大解剖していきます。

まずはCSの組織体制についてお話しします。外資系ではよくあることですが、グローバルで見た時に世界市場を大きく3つのリージョンに区切っています。南北アメリカ大陸部分がAMER、我々がいるアジア太平洋地域がAPJ(またはAPAC)、ヨーロッパ・中東・アフリカがEMEAです。

このエリアごとに組織図があり、その中で更に国ごとに分かれているという縦組織なのですが、CSのユニークな点として、このようなリージョンごとの組織の一員として所属しながら、CSという機能組織として横軸横断的に存在しているという特徴があります。そのため他のリージョンのメンバーとも頻繁にやりとりをしますし、足並みを揃えて活動していくことが求められるDoted (マトリクス) な組織です。

(小林さん作成資料より抜粋)

我々のいるAPJには、日本、シンガポール、オーストラリア(シドニー)の3カ国の拠点があり、それぞれの国のCSMとチームで連携を取りながら働いています。15カ国出身のグローバルなメンバーでサクセス活動をしているのですが、それ故の難しい問題があります。

グローバルと日本の狭間でいかに折り合いをつけるかが重要

小林:例えば私の場合、日本の組織に所属しているので、普段は「日本のビジネスをいかに良くするか」を中心に考えてサクセス活動をしたり資料を作ったりするのですが、一方で上司やメンバーは他のエリアを担当しているので、その人達にも価値を感じてもらえるように毎回翻訳する手間があります。

また、単に翻訳するだけではなく、グローバルの市場・ニーズに合わせて汎用性を高めた内容に変えないと価値が伝わらない。けれど、逆にグローバル用に汎用性を高め過ぎると今度は日本で使いづらくなってしまうんです。日本のユーザに刺さるコンテンツを作ると今度はグローバル側では刺さらない、というトレードオフのような状態で、この狭間でいつも悩みながら走っている感じです。

でも、振り返ってみるとこれはSansanで海外事業を担当していた時と全く同じ悩みではありますね。外資系か日系かにかかわらず、グローバルビジネスを本国以外で行う時は常にこういった悩みがつきまとうものだと気付きました。そこといかに折り合いをつけてやっていくかが、グローバル企業のCSにおける重要なポイントの一つなのではないかと思います。

Dropboxの4つのサクセスモデル

小林:ここからはCS活動における戦略について、タッチモデルの三角形を使って解説していきたいと思います。実際にはここまで綺麗にタッチモデルがフレーム化されているわけではないのですが、今回は理解しやすいように敢えて汎用性を高めた形に整えております。

(小林さん作成資料より抜粋)

ハイタッチは①ダイレクトサクセスという手法を使っており、エンタープライズのお客様が対象となります。次に③ミドルタッチはパートナーサクセスという手法で、BtoBのお客様のSMBマーケットが対象です。続いて②Co-Successという手法があり、エンタープライズやSMBの案件で状況に応じて適用しています。最後が④プロダクトサクセスという手法で、BtoCのお客様にはテックタッチでサクセス活動をしています。Dropboxではこの4種類を組み合わせたユニークなハイブリッドモデルを採用しています。

CS組織をスケールさせていく時に、通常日系SaaSでは、まずシニアCSMがハイタッチで型を作って、安定して回していける仕組みを整えた上で若手CSMをトレーニングする、という流れで自社のスケーラビリティを強化していくやり方が多いと思います。それに対して、このモデルのユニークなところは、その部分を自社ではなく他社にお任せする形になっている点です。

ダイレクトサクセス

(小林さん作成資料より抜粋)

ここからはそれぞれのサクセスモデルについて詳しくご説明しますが、ステークホルダーが非常に多いので、各自の役割について明確にしたうえで詳細をお話させていただきます。

まずDropboxの中にはチームが2つあります。1つが直販チーム、もう1つがパートナーチーム(代理店支援)です。そしてお客様すなわちユーザ企業様がいた時にダイレクトサクセス型では、直販チームに営業、CS、技術営業、サポートがおります。

技術営業は外資系企業だとTA / SA / TAMなどと呼ばれることが多いですが、技術的に難しいプロダクトではCSとは別にこういった方々がメンバーに入ります。CSのすべきことはプロダクトの利用価値を伝えて組織に定着させていく活動であり、テクニカルなことを受け答えすることとは別のため、こういった切り分けをしていく体制になっています。

お客様側には大きく決済者、運用責任者、情報システムのお三方がいて、普段はこの方々とやりとりしながら一般ユーザーの方に広めていき、時には一般ユーザーの方のところまで直接触りにいってサクセス活動を行うこともあります。

ここまではTHE MODELにも載っていて誰もが知っていると思いますが、実は外資の世界ではダイレクトサクセス型のCS組織は少なく、これから説明するパートナーサクセスの方が主流ではないかと感じています。

パートナーサクセス

(小林さん作成資料より抜粋)

パートナーサクセスとは、パートナー企業様にカスタマーサクセスを行っていただくということです。パートナー企業様の中に営業やサポート、SEの方がいらっしゃるので、この方々にサクセス活動をしていただけるように、ベンダー型のパートナーの支援チームが主体となり、パートナー越しにサクセス活動をお届けしていきます。

ベンダーによって特徴があり、ダイレクトサクセスだけを行うベンダーもあれば、反対にパートナーサクセスだけを行っているところもあります。その場合は営業側も全てパートナー系の営業や技術営業しかおらず、自分達が直販することはありません。直接的なカスタマーサクセスはせずに、パートナー企業を支援することで間接的にサクセスをお届けする、というメーカーでいうところの商品を提供するディストリビューター的な役割に徹しているベンダーもいます。

クラウドネイティブなベンダーはオンプレのプロトコルに合わせることが重要

小父内:これまでに外資系企業様とコラボイベントを何回か開催してきましたが、お話を聞いているとどこでもパートナービジネスを当たり前にやっていらっしゃいますよね。

小林:そうですね。私がSansanからDropboxに移った時に感じた相違点として、Sansanはクラウドネイティブな会社だったので、社員全員の思考はクラウドが基本だったんです。ところが、日本のIT業界には元々オンプレミスの期間が長くあって、それが最近になってクラウドにシフトしているだけなので、やはり土台はオンプレミスのビジネスの中で培ったものが主流なんです。そしてオンプレミス時代の日本のIT業界では、米国のベンダーは自社商品を日本の販売代理店/Sler側に卸売をして拡販していく、という形が基本だったので、そういった方々と一緒にサクセス活動をしていくとなると「いかにクラウドベンダー側がSler側のビジネスモデルの違いやスキームの違いを理解して彼らのプロトコルを合わせていくか」が重要になってきます。これはクラウドしか知らない若い世代の方だと肌感のない部分だと思いますので、今日伝えたかったポイントの一つでもあります。

パートナーサクセスはすり合わせが大変。しかし上手くいけば莫大なスケーラビリティに

小父内:パートナー企業の育成や連携はどのように行っていますか?自社で行っていることを外部の人に教育するのはリソース的にもかなり大変だろうなといつも不思議に思っています。

小林:実のところ難しいです。難しさの原因としては、直販の場合は自社の社員を育てていくことになるので会社として目指している方向は同じですが、パートナービジネスの場合は会社がそもそも別だし、オンプレミスの名残がある会社とクラウドネイティブな会社ではカルチャーも売り方も違うので、そういった根本的な考え方の違いや利害調整をしていく難易度が高くなるんです。ただ、すり合わせが上手くいった時に発揮されるスケーラビリティはダイレクト型の比ではないので、そこが最大のメリットになります。

パートナービジネスで広げていくことが得意なスペシャリストはそういったパートナー企業の目利きに長けた人です。日本のSIerやオンプレ文化を熟知していて、どんな商材だったらどのパートナーに任せて、どう広げていけばどのエリアの商圏を穫れるか、などを全て熟知しており、それが彼らの市場価値の高さに繋がっています。

小父内:直販とパートナーの比率はどのようになっていますか?

小林:具体的な数字はお伝えできませんが、Dropbox Japanのビジネスは最初はかなりダイレクト寄りで始めたところを、ここ数年でパートナーシフトという大きな転換をしています。もともとダイレクト型だった従来のモデルから数年掛けてパートナー型にシフトしたため、現状は比率が反転してパートナーの方が多くなりました。ただ、最初からパートナーサクセスに振り切っているベンダーさんよりはまだまだ比率は少ないかなと思います。

小父内:それだけ思い切って振り切るだけのポテンシャルがやはりあるということですね。

小林:そうですね。スケールをしていく時に、ダイレクトサクセス型では社内で人員拡大をしたり、アウトソーシングで契約社員を雇ったりして拡大していくのに対して、パートナーサクセス型ではスケールさせる根本思想が異なっています。そのため、ダイレクトサクセスでいくのかパートナーサクセスでいくのか、どちらのタイプのスケーラビリティを持たせるのかによって組織戦略やその後やるべきことが変わってきます。プロダクトの質や市場によって最適なやり方が異なるので、どちらを取るべきかを慎重に選ぶ必要があると思います。ダイレクト型からパートナー型への大転換を経験している身として、それがいかに大変かはよく理解していますので… 

ダイレクトサクセスのオンボーディング

それからダイレクトサクセスに関して、オンボーディングを例にとってDropboxがどんなカスタマーサクセス活動をしているのか具体的にお見せしたいと思います。

(小林さん作成資料より抜粋)

まず法人のお客様の導入目的としては、ファイルサーバーをクラウド化させていくという目的が主になります。クラウド業界にいる方は最初からクラウドストレージを使っているという方も一定数いるのではないかと思いますが、日本全体で見るとまだまだファイルサーバーをオンプレミスで使っている企業様も多くいらっしゃいますので、そこをクラウドストレージでリプレイスしていくことが多いです。

20,000ライセンス規模の案件になってくると、導入に2年くらいかかることもあります。なぜこんなに時間がかかるかというと、Dropboxのようなプロダクトの場合、基幹システムをクラウド化するというニュアンスが強いので、絶対にミスが許されないような場合が多いからです。そういった中でオンプレミスのファイルサーバーをクラウドに完全移行していくとなると、かなり細かいところまで事前に要件定義などをチェックする必要があり、システム全般の知識やSIerの知識が必要になるため、細かいガントチャートを作って一個ずつ着実に進めていくことになります。そのため、DropboxはSaaSでありながら実は IaaS/PaaSに近い感覚のプロダクトかなと思います。

ただ、ジャーニーの大まかな流れとしてはおそらく他のプロダクトと似ていて、営業がクロージングした後、引き継ぎのミーティングを行い、キックオフに備えて諸々準備します。そしてお客様と一緒にキックオフミーティングをして、そこから管理者トレーニングをした後に初期設定をしていただきます。Dropboxの場合、フォルダの構造やマッピングが重要になってくるので、そのあたりを実際にデータを移行する前に入念にコンサルティングさせていただきます。それからライセンス配布、データ移行、ユーザートレーニングをして、一通り終えたらクラウドストレージとして使うのに必要な導入は完了、といった流れです。

ちなみに移行するデータの量が数百テラバイトもある大型の案件ですと、慎重に動かしていく必要があるので、オンボーディングだけで年単位の時間がかかることもあります。

小父内:データ移行期間中でも特定の部署ではすでに使用開始しているような形ですか?

小林:そうですね。2年間かけて導入する時に、例えば今月はフェーズ1の方々で土日に移行して月曜日からその方々が使える状態にする、といったことを一つ一つ着実に進めていきます。

2年もかかる複雑な大規模案件となると、ダイレクトサクセスで行ってスケーラビリティを出そうとしても、それが可能なスキルを持った人材を集めるのも難しいし、ジュニアメンバーだとトレーニングだけで時間がかかってしまいます。とりわけ外資では数年で転職してしまうのが普通の世界なので、育ったと思ったら転職されてしまうことも多いんです。

そうなった時にやはりパートナーサクセスの手法の方がスケーラビリティの相性が良いため、結果的にパートナーサクセス型に舵をきる外資ベンダーが多くなります。特にSMB層に関しては完全にパートナー側で回していってもらえるエコシステムを構築する、という方向性に向かいやすいわけですね。

Co-Success

(小林さん作成資料より抜粋)

小林:とは言っても、パートナーさん側でもトレーニング期間が結構長くかかったり、新しく仕様が変わるものをベンダーが支援していく必要があったりします。そのあたりを協業で行っていくというところが、こちらのCo-Successのモデルの話になります。

Co-Success型だと全員がステークホルダーになって総動員でやっていくような形になるので、登場人物がかなり多くなります。それでもこの手法を使う理由は大きく分けて2つあり、1つがエンタープライズのVIPレベルのお客様に対して、パートナーさんだけでなくベンダーとパートナーで協業でしっかりとご支援したほうがいい、という場合です。もう1つはパートナーさん側が新しいパートナーさんで、トレーニング中の際に、随時ポイントをお伝えしていかないとキャッチアップが難しいと感じた時も協業のCo-Successが入ります。

それから図の下に赤枠で囲った部分で、カスタマーサクセスという概念がまだ浸透していないパートナー企業様もいらっしゃって、そういったところで我々CSはカスタマーサポートやSEだと勘違いされてしまうことがあります。そういった認識の齟齬が発生しやすいところで適宜コミュニケーションをとりながら役割をご説明していく必要があります。

プロダクトサクセス

小林:最後がProduct Successのテックタッチの部分になります。このモデルをあてる対象はコンシューマー層(B2C)側のユーザーとお考えください。7億ユーザーの大半はコンシューマー向けプランのDropboxを利用しており、そこをどうサクセスしていくかという部分でこのテックタッチを適用しています。

最近では「PLG (Product Led-Growth)」という言葉も有名になりましたが、基本的にはプロダクトサクセスという形で、直接的に人手をかけるのではなく、プロダクト自体をより使いやすいものにしていき、国や文化にかかわらず使えるようにすることでスケーラビリティを持たせていくというサクセスになります。

プロダクトをグローバルに展開する時の2つの考え方

ここでは私がDropboxに入社してから学んだ、プロダクトをグローバル化させていく時の2つの考え方をご紹介いたします。

(小林さん作成資料より抜粋)

まず1つが、インターナショナリゼーションという考え方です。言語や文化の違いを考慮せずに成り立つ設計をしていくということで、言語タブを押して切り替えるだけで使えるようなプロダクト設計や、自動翻訳でどの国の人でも読めるようなヘルプページを充てていく手法がこれに当たります。インターナショナリゼーションは低コストで、スケーラビリティを確保することが可能です。

もう1つが、ローカリゼーションという考え方です。こちらは各国の言語や文化の違いまで考慮した上で、国別に機能をカスタマイズしたり、ヘルプページやコンテンツの事例もその国の文化に基づいたニュアンスを考慮して翻訳したり作り替えたりする設計が該当します。

Dropboxのテックタッチは原則「インターナショナリゼーション」を採用することで数億人のユーザーを支えています。

基本は言語タブで切り替えて誰でも利用できる、プロダクト自体だけで完結する形にしています。しかしそれだけでは難しいので、バーチャルトレーニングやヘルプセンター、ユーザーコミュニティなどをご用意しています。こちらも全てインターナショナリゼーションの考え方を採用して作っているため、どの言語でも同じフォーマット、同じコンテンツになっており、言語タブで切り替えられる仕様となっております。

(小林さん作成資料より抜粋)

小父内:自動翻訳の技術は年々進んでいますが、基本的にはそれで問題なくサクセスできるものでしょうか?

小林:おおよそカバーすることができています。ただ、みなさんも経験したことがあると思いますが、外資系のヘルプページを見ると、言っていることはわかるけどちょっと日本語が変だったり、導入事例を見ると海外の事例ばかりでいまいちピンと来なかったりしますよね。

そのため、基本的には自動翻訳でカバーできるものの、本国以外でサクセス活動をしているとローカリゼーションの考え方も取り入れたいという欲求は必ず出てきます。

Dropbox Universityで日本ユーザー特有の悩みをサポート

ローカリゼーションの事例として、Dropboxが用意しているバーチャルトレーニングという事例を紹介します。こちらは日本語も対応しておりとても優れたコンテンツなのですが、グローバルに汎用性を高く設定したコンテンツのため、日本特有の悩みまではキャッチアップできないという課題点がありました。そこで、日本のユーザーが躓きやすいポイントをコンテンツ化し、このターゲット層に特化したテックタッチ施策をしたいと考えて出来たのが“Dropbox University”というコンテンツ企画になります。こちらは日本のCSチームがプロジェクト立ち上げ、コンテンツ作り、イベント企画、ウェビナーのアーカイブ化まで全て行っており、アーカイブはこちらのサイト上でいつでも視聴できる形になっています。

(小林さん作成資料より抜粋)

この企画で「半年で1,000名以上のユーザーを集客できた」という日本チームの成功事例なのですが、悩ましいのは日本で成功したからといって更に拡大したりそのまま翻訳して他の国に展開したりしても、グローバルではそのまま使えない、という部分です。

日本で成功したのは日本向けコンテンツ内容を寄せていったからであって、そこをやり過ぎるとグローバルへ展開する際のスケーラビリティがなくなってしまいます。逆に最初からグローバルでのスケーラビリティばかりを求めると「どの国でも使えるけど、結局どのユーザーにも刺さらない」といったコンテンツになってしまう罠があるので、グローバル企業のCSとしては、そこのバランス感覚が求められるかと思います。

このような様々なサクセス手法をブレンドして展開しているのが、Dropboxのハイブリット型カスタマーサクセスになります。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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