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今だからこそ考えるコミュニティのあり方と未来の姿(小島英揮氏×小父内信也氏 特別対談)【前編】

新型コロナウィルスの影響が、人と人の繋がりが重要な「コミュニティ」の業界にも広がっています。リモートワークの推奨やイベントの中止など、今までと同じやり方が通用しなくなってしまった「今」。
誰も正解が見えない中、コミュニティマーケティングの第一人者である小島英揮氏と名刺アプリEightのコミュニティ立ち上げ期からコミュニティマネージャーを務める小父内信也氏が「これからのコミュニティ」を語る、リモート対談が実現しました。

小島英揮(おじま ひでき):アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(AWS)の日本採用第一号であり、日本最大のクラウドコミュニティ「JAWS-UG」を創設。現在はSaaSビジネスやコミュニティマーケティングの分野でパラレルマーケター・エバンジェリストとして活躍。著書に「ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング」がある。
twitter:@hide69oz

小父内信也(おぶない しんや):「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げるSansan株式会社にて、ユーザー数250万人以上の名刺アプリEightのコミュニティマネージャーを務め、2019年10月にコミュニティ関連のコンサルティングを行う合同会社Obuを立ち上げ。株式会社Asobica CCO(Chief Community Officer)
twitter:@obushin

小父内:早速ですが、コミュニティへのアプローチとしては、マーケティングとCSで異なるのでしょうか?
僕が元々サポートやカスタマーサクセス(CS)からコミュニティの世界に入っていることもあり、CSからコミュニティにアプローチするイメージがあります。


小島:確かにその形が多いですね。
それはCSは目の前に向き合う顧客がいるから、コミュニティに視点が向きやすいのだと思います。

ただ、どちらが正解というものがあるわけではないですよね。会社として、コミュニティに何を期待しているかで担当の部門が変わると思いますし、本来コミュニティは「既存顧客にサービスをよりうまく使ってもらう」面と「新規顧客が使い始める前にサービスへの正しい期待値を持ってもらう」面の二つの側面があるので。

CSチームがコミュニティを始めると前者になるんです。ただ、その既存顧客の声をこれから使い始める人にどうして届けないのだろう、というのが僕のクエスチョンですね。


小父内:なるほど。確かにCSは既存顧客にばかり向いてしまいがちですよね。
特にサブスクリプション型ビジネスだとCSはチャーン対策(解約阻止)に注力しますし。そう考えると、「これから使い始める人」というマーケティングの視点も必要になりますね。


小島:そうです。CS視点だけだと既存顧客に集中してしまうので、それはマーケティング畑の僕からすると、スケールしないという点でもったいないと感じます。

また、チャーン対策としても、顧客がオンボーディング後にコミュニティに入るよりも、コミュニティ経由で得た情報から正しい期待値をもって使い始めてくれる方が、離脱が少ないのではないかと思うのです。既存顧客と新規顧客どちらにも、コミュニティの力を使いたいですよね。


小父内:確かにそうですよね。
僕は今、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーをしていますが、僕がCS領域の目線でコミュニティを見るのに対して、一緒にコミュニティを立ち上げた相方が広報責任者としての目線からだったので、その相性がとても良かったですね。

彼の持っているマーケティング視点とか、広報としてプレスリリースを打つという発想とかは、なかなかCSにはなかったりしますね。その点では、Sansanの山田氏も「カスタマーマーケティング」を提唱していますが、その通りだなと思います。

コミュニティの効果測定

小父内:コミュニティを立ち上げる時に「ステークホルダーに了承を得なければいけない」ということで、ROIの説明をよく求められますよね。
僕も色々な企業の方によく相談を受けますが、小島さんはどのように説明されていますか?


小島:まずコミュニティは、ビジネスのどの部分に効くのかを整理してステークホルダーに理解してもらう必要があります。
ROIを気にされる方は、恐らくセミナーなどのトラッキングが出来るものと比べているのだと思いますが、世の中にはROIがトラッキング出来ずとも、重要性が認知されているものはたくさんありますよね。

例えば、会社の事例作成とか。だから、コミュニティは活用事例がどんどん産出されるような仕組みだと思った方がいいですね。会社が事例を作成する際に、ベンダーがピンポイントな事例を全てコンテンツ化して配信するのは、それこそROIが悪いですよね。


小父内:確かに時間も掛かりますし、的外れな時もありますね。


小島:ROIを気にされるなら、コミュニティには同じ職業や関心層の人同士が集まっているので、その中でピンポイントな事例を出して回してもらうのが一番効率が良いと思います。

この「伝えたい層に、顧客からどんどんコンテンツが供給されるモデル」と「自分たちで事例を作る」のと、どちらが良いか問いかけると前者を選ばれる方が多いです。
そうしたら「そのモデルをコミュニティ以外で実現できる方法はありますか」というお話をすると、大体納得頂けますね。


小父内:ROIと同時に、KPIもよく聞かれますよね。
僕の持論ですが、KPIは仮説で設定しましょうと。そしてPDCAをどんどん回して各数値をフィットさせながら、一方でそのうちにコミュニティが上手く稼働してしまえば、最終的になんとでも説明出来るというものです。

だから、究極はKPIにあまりこだわっていませんが、小島さんはKPIをどう紐づけていますか?


小島:まず、ビジネスにおけるコミュニティは、各ユーザーが自分に合った活用事例やロールモデルを見つけやすくなっているのが良い状態だと僕は理解しています。
その上で、それをどう測るかを考えた時に数値で表すことの出来るKPIとしては、例えばまず1つは、アウトプット数がありますよね。コミュニティから発信される活用事例数とか、ツイート数がそれに当たると思います。

もう1つは、オフラインやオンラインでのミートアップの新規参加者率やコミュニティのグループの新規メンバー数があります。僕はオフラインミートアップの場合は、新規参加者率は、40〜60%くらいが成長軌道だとよく話しています。

最後の1つは、接点の数ですね。オフラインでもオンラインでも、開催数と参加者数から導き出せる数値がどれくらい大きくなったかというのを見ます。

今言ったようなポイントは定量的KPIとして数字で追うことが出来ますが、それによっていくら売れたのかということ示すのは無理だという話ですよ。


小父内:手前のKPIはあったとしても、結局はコミュニティだけの話ではなくて、コミュニティを起点にトータルでどういうマーケティングをしたかという営業活動全体の話になるということですね。
あと、オフラインイベントの参加者割合については僕も同じ考えです。そして色々と試行錯誤する中で至った黄金比が「1:4:5」です。

これは運営が1割、リピーターが4割、新規参加者が5割という比率です。全体を知っている人と初めての人と5:5で半分ずつになるように設計するとイベント全体の流れや雰囲気が良くなることに気付きました。


小島:小父内さんがお得意な「ユーザーの熱量」や「コミュニティリーダーの質」は定性的なKPIですよね。

これは残念ながら数値では表せないので、おすすめは、それを評価する人、コミュニティマネージャーやマネジメントチームをあまり変えないことですね。
そうすることで、絶対的な評価はしづらいものでも相対的な動きの評価があまりぶれずに行えると思います。

ビジネスで通用するコミュニティのつくり方

小父内:コミュニティといっても、その中にいる人に依存しているケースがあるじゃないですか。
ある人がきっかけでコミュニティに入って、その人が抜けたら熱が冷めてしまうというような。小島さんは、それはコミュニティとして成立していないと思いますか?


小島:ビジネスのコミュニティとしては、成立していない気がします。
きっかけやアクセラレーターとして「人」があるのは良いですが、最終的には製品とかサービス、提供している価値や世界観にコミットしていることは大事で、それがあるから「商品のファン」と呼べるわけですよね。
人にファンがつくと、究極どの商品でもいいことになってしまいますよね。


小父内:オンラインサロンみたいなものですよね。一人のカリスマに憧れているみたいな。
サービスやプロダクトへの愛着、いわばブランド愛がなければ、結果的には他社サービスなどに移り気になってしまうなと。

小島:オンラインサロンも色々な形のものがあるので一口には言えないですが、最終目的がカリスマとの距離間を縮めることになっているものが多い印象はあります。
そのカリスマとの距離感をお金で買うモデルもありますよね。
マネタイズの方法としては「なるほど」と思いますが、この形では、カリスマが人間である以上リソースは有限なので、コミュニティメンバーがこのリソースを取り合う状況になり、結果的に外向きな力が発揮されないように感じます。

商品の世界観からなるコミュニティでは、その世界観の共感者を増やしていくという外向きの動きに対して、コミュニティの人たちはサポートしてくれますよね。


小父内:そうですね。有限でなくシェアするという点で小島さんのCMC_Meetupはすごいですよね。雰囲気がすごく良くて、とても話しやすいです。以前登壇させてもらった時も、みなさん暖かい目で見守ってくれて(笑)


小島:あそこは発起人である僕との距離はあまり関係ないんですよ。
コミュニティマーケティングという共通の関心軸があって、その軸の周りにスピーカーやファシリテーターがいる構図なので、誰が話してもみんな聞いてくれるし、スピーカ―も聞き手も増えていきやすいですよね。
で、その先に、聞き手だった人が発信側にどんどん回る連鎖が生まれるのが重要。この連鎖がないと、広がるコミュニティを作るのは難しいですね。


小父内:そういう話でいうと、最近コワーキングスペースが多いじゃないですか。あれも「コミュニティ」と位置付けられますが、ビジネスにおけるコミュニティとは違う印象を持っています。小島さんはこの辺り、どう思われますか。


小島:コワーキングスペースを運営されている方々とお話したことはありますが、だいぶ違うなという感覚です。
さっきのCMC_Meetupを例に紹介したように、コミュニティには共通の関心軸が必要なんですよね。
ただ、コワーキングスペースには、様々な思惑で集まった人たちが入っていることが多いと思うので、全員に共通の関心軸を持ってコミュニティを作るのはとても難しくて、マネージするのには相当なスキルが必要です。


小父内:たまに僕もコワーキングスペースの方から相談を受けて「コミュニティマネージャーをやってください」と言われますが、そこは難しいので極力やらないって断っています。
「場」を中心としたコミュニティって、やはりサービスを中心としたものとはアプローチが異なるので、そこはそこで向いている方がいるんだなって思っています。


小島:難しいですよね。まず、どんな関心軸やコンテキストで再構成していけば良いかというところから話をしていかなければならないですよね。
そこから考える必要があるのに「ちょっとコミュニティの面倒を見てくれない?」みたいな形だと受けられませんね。コミュニティは丸投げ禁止ですね。


小父内:丸投げ禁止。これはいいフレーズですね。(笑)すごくわかります。


対談の後編では、コロナウィルスの影響で小島氏が提唱する「オフラインファースト」の実行が難しくなった今、コミュニティ構築についてどう考えているのかをお伝えします。

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執筆:cxin

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