契約継続率50%アップの裏側

Webテクノロジーで社会問題が解決され、より良いマッチングが次々と生まれる世界を目指す株式会社ベーシック(以下、ベーシック)にて、アカウントサクセスチームの立ち上げを行い、現在はアカウントマネジメントグループのマネージャーを務める秋在淳(アキ ジェスン)さんに、ferret Oneの継続率を30%から85%まで引き上げた施策を伺ってきました。

秋 在淳 氏
株式会社ベーシック SaaS事業部 カスタマーサクセス部 アカウントマネジメントグループ マネージャー
Web制作会社やベンチャー企業の立ち上げ、起業を経て2016年に株式会社ベーシックへジョイン。フィールドセールスマネージャーから、アカウントサクセスチーム立ち上げのためカスタマーサクセス部へスイッチ。
現在はアカウントマネジメントグループのマネージャーを務める。
Twitter:@jaesoon_aki

ー秋さんのこれまでのキャリアと、現在取り組んでいることを教えてください。

僕は新卒でWeb制作会社に入社して、美容業界に対してコンサルティングやセミナー講師を行っていました。その後、スキャンマン株式会社に4人目の社員としてジョインし、営業組織の構築やアライアンス戦略など幅広い業務をこなしながら、並行して、自分でイベント事業会社を起業しました。
はじめは、平日スキャンマンで土日イベント事業と棲み分けてやっていましたが、とあるタイミングでイベント事業に専念することを決断し、しばらくはそちらに専念していました。
その後、とある尊敬する先輩からのご紹介でベーシックを知って、入社しました。

ベーシック入社後はインサイドセールスから始めて、フィールドセールスとしてエリアマネージャーを担い、去年の5月にアカウントサクセスチームの立ち上げメンバーとしてカスタマーサクセス(CS)チームにジョイン、現在はアカウントマネジメントグループのマネージャーを務めています。


ー現在のベーシックのCS組織の体系と業務内容はどういう形でしょうか。

CS部が包括しているのは「アカウントマネジメントグループ」「カスタマーサポートグループ」「制作グループ」の3部門です。
僕が見ているアカウントマネジメントグループは、そこから更に「オンボーディングチーム」「アカウントサクセスチーム」「ソリューションチーム」という3つのチームに分かれています。

それぞれのチームの業務内容は、オンボーディングチームはferret Oneを活用したWebマーケティングを実施するためのセットアップを完了することが目的です。ペルソナ設定やCJM作成といった初期設計から、ferret Oneを活用したWebマーケティング施策の実施までをサポートします。

アカウントサクセスチームは、オンボーディング後のferret Oneを活用したWebマーケティング支援です。定期的にユーザーの活用レベルに合わせた定期ミーティングを行い、アップセルやユーザーの活用支援を行っています。

ソリューションチームは今整備を進めているところですが、アカウントマネジメントグループがWebマーケティング支援を行うことで生まれるソリューション提案に対して、クオリティ管理やサポートの効率化を図る目的で設置しました。


ー3つのチームがそれぞれ連携して動いているのですね。各チームの目標はどう設定されていますか。

オンボーディングチームの目標は、オペレーションの最適化と顧客に合わせたオンボーディングプランの実行です。
顧客とのスケジュールディレクションをずれなく行えているかと、初期設計や施策実施サポートを行った後のアンケートで「ferret Oneを使って、今後行うべき施策の操作方法は明確ですか?」等のチェック項目が全て「YES」になっているかどうかを見ています。
あとは公開サポート後のコンバージョン成果が出ているか否かというところですね。

アカウントサクセスチームの目標は、毎月の訪問件数を決めていて、その訪問件数以内で担当顧客の契約更新率の目標を達成することです。
ロータッチイベントについてもアカウントサクセスチームが責任を持ってやっています。目的は、ロータッチ施策を行うことで訪問件数の効率化を行いながら、契約更新率を維持することです。
ハイタッチ、ロータッチをうまく組み合わせることで、4段階で設定しているferret Oneの活用レベルを上げていくことが目標に入っています。


ーferret Oneの継続率が元々30%から85%まで引き上がったという記事を拝見しましたが、どういう取り組みを行って、そこまで引き上げられたのでしょうか。

まずは、全てのターゲットに対して顧客訪問とヒアリングを行い、その顧客に合わせたferret Oneの活用方法やマーケティング支援を再オンボーディングしました。その際は、約150件の顧客を2人で3〜4か月掛けて回りましたね。
訪問前もトレーニングやテクニカルサポートの用意はしていましたが、顧客からの問い合わせがないと困っていることに気付けなかったり、顧客側にマーケティングの知識がないので、どう質問して良いかわからずに止まるということが起きていたことが訪問することによって見えてきました。

顧客の声を基にプロダクトを改善した部分もありますが、顧客の発信だけに頼ってしまうと顧客が知っているツールの機能の範囲の中でしか問い合わせが来ないですよね。
だから、顧客にプロダクトを深く理解して使ってもらえたら、もっと違う内容の問い合わせ内容になるだろうなと思っていました。
訪問をして、顧客に合わせて活用する場所を変えたり、ノウハウを提供することで、顧客にferret Oneがどのように使われているか見えてきたという感じですね。そうやって顧客の解像度を上げていったことが、継続率向上に大きく影響を与えたと思います。


ーCSからセールスに対して「営業をかけて欲しい顧客像」の要望がはっきり出てくるという話を耳にしましたが、これも顧客の解像度が上がったことで要望が出るようになったのでしょうか。

そうですね。全顧客を訪問したことがそこにも繋がっています。
どういう顧客がferret Oneを活用していて、どのような成果をあげられているのかが完全に見えるようになったので、そこから、ferret Oneとして第一ターゲットとすべき顧客が明確になりました。

CS発信で組織を動かす

ーユニークな名前のついた貴社ならではの取り組みがあるとお聞きしたので、それぞれ詳しく聞かせて頂ければと思います。まずは、「Uber voice」は、どういった取り組みでしょうか。

Uber voiceとは、オンボーディングやアカウントサクセスチームの定期訪問、制作やサポートへの問い合わせを通じてCSに集まっている声をまとめ、各セクションにシェアする取り組みで、隔週で開催しています。
「CSが1番顧客の声を集めることができる場所なので、そこで拾った声を適切に、各セクションに届けましょう」という目的で、非常に重要だと思っています。

例えば、マーケティング部には「ferret Oneユーザーのニーズトレンド」、セールス部には「成果が出ている顧客事例」、プロダクトには「顧客の実際の活用内容」をフィードバックするというような形ですね。

更にUber voiceからの派生で、「プロダクト委員会」という組織も出来ました。この委員会はプロダクト責任者、開発責任者とメンバー、事業責任者、CSの選抜メンバーで組織されています。
委員会ではCSの選抜メンバーが顧客の声をプロダクトチームにダイレクトに届けることで、その場で開発の優先順位やその返答において顧客へ届けるべきメッセージの議論を行い、プロダクト改修の優先順位や顧客とのコミュニケーションを決めます。

上記のUber voiceやプロダクト委員会の組成によって、顧客の声を拾ってから反映されるまでのスピードが早い組織体が出来上がったことは大きいと思いますし、契約更新率の向上にも寄与していると思います。


ーCS発信でプロダクト改善の優先順位を作るのは珍しいですよね。

そうですね。なかなか難しいだろうなとは思います。トップダウンでの依頼や開発が作ってきたものの優先順位が高くなりがちかなと思いますが、ベーシックはそれがないです。
顧客の声から優先順位が上がったものの例としては、ページ表示速度の改善やメールマーケティング機能のアップデートとかですね。


ー「もくもく会」ではどういうことをやっていますか。

もくもく会は、ferret Oneをご契約いただいている顧客にCSが同席し、ferret Oneを使ってもらう環境の提供をしている場です。ここには僕も含めて、アカウントサクセスのメンバーが常駐していて、顧客にその場で実際にferret Oneの運用や活用をしていただきながら顧客の不明点にお答えする形になっています。

(※現在はオンラインで行っており、その詳細をメンバーがnoteにまとめてくれたので宜しければご覧ください。)
https://note.com/0monmon0/n/nf0d0b6f4b82f


よくある声として「使っているとすぐにわからないところが出てきてしまうので、テクニカルサポートに連絡するが、返信を待ってから作業を再開すると作業完了までに想定以上の時間が掛かってしまう」というものがあります。
サポートからの返信は必ず30分以内にというルールはあり、そのルールに則りサポートの対応をしていますが、顧客としては「今」解決したいという気持ちは強いと思います。
だから、「作業しながらわからないところをその場で解決して、すぐに作業を終わらせましょう」というのがもくもく会のコンセプトです。

あとは、社内にいると結構他の業務を振られて自分の作業が進まないことは多いと思うので、作業に集中する時間を作ってあげることで、顧客のferret One活用レベルが上がっていると感じますし、実際に顧客からの満足度もかなり高いです。

もくもく会はまだ今年始めたばかりの施策なので、今後について色々と考えていますが、コミュニティ形成の文脈でも取り組みを始めてみようとしています。
まだ構想段階ではありますが、例えば、機能別や施策別といった分科会形式での開催や、もくもく会終了後にユーザーイベントを実施するなど、交流が生まれやすい取り組みを常にメンバーと話し合っています。

自然発生的に生まれる「シェア」の文化

ー貴社のサービスにおいては、WebマーケティングやBtoBマーケティングの知識がないと、CS業務を担うのは難しそうだなと思いますが、属人化しないCS組織の作り方として取り組まれていることはありますか。

属人化しないための取組みとして「ナレッジ推進プロジェクト」があります。
そのプロジェクトでは各人のナレッジを吸い上げることを行っていて、どういうアプローチをすることで成果が出ている、こういう支援をしたことでこの数値がこれくらい変わったなどのノウハウをを情報共有ツールのkibelaを使って共有しています。

プロジェクトの動きもそうですが、「出来る限り全員が同じノウハウを持って顧客支援を出来るように」ということは個人としても心掛けていますね。
特にベーシックはもともと情報を共有する文化が他社より浸透しているので、各人がそれをベースに動いている感じだと思います。


ー今話に出た、貴社の文化についてお聞きします。社員発信のTwitterやnoteがすごく活性化していますが、その背景には何があるのでしょうか。

Twitterやnoteに取り組んでいるのは、顧客や採用候補者をはじめとするステイクホルダーとの既存の接点だけではなかなか伝えきれていなかった情報や、知ってもらいたい情報を発信するために採用広報チームを中心に発信を強化してきたというのが大きいですね。
そうすることで結果的にそのコンテンツをもとにリファラル採用が増えたり、ferret Oneの自然検索や指名検索での流入が増えたりすることに繋がっています。

(詳しくは下記noteにまとまっていますので宜しければご覧ください。)
全社でTwitterに取り組んだら、会社にとって良い影響が3つもあった話

上記に加え、事業自体が大きく改善したことで、社員が気持ちよく会社のことを紹介出来るようになったことも、Twitterでの発信が活性化した要因としては大きいかなと思っています。

発信に関して、会社から「これしてください」という強制は全くないですが、単純に採用や事業において成果が出るのが嬉しいというのと、あとは代表も含めた執行役員陣が率先してやっているので、メンバーレイヤーがその姿を見て一緒に取り組もうとなっているのかなと思います。


ー最後に、今後秋さんがチャレンジしていきたいことを教えてください。

チャレンジしたいこととしては、「コミュニティマーケティング」ですね。
我々の事業部ミッションである『Webマーケティングの大衆化』を実現していくためにも、コミュニティマーケティングは早期で取り組みべきだと思っています。コミュニティマーケティングの効果は、「サポート工数の削減」「継続率の維持・改善」「新規顧客の紹介効果」などがあります。
ferret Oneというツールは様々な活用方法があるため、ユーザー交流が生まれるコミュニティマーケティングが非常に有効だと考えています。

そのためにもまずは、アカウントサクセスチームによる定期MTGやもくもく会等で、ユーザーの課題感や悩みを拾い上げる事がとても重要だと思っています。そしてferret Oneをより活用し、成果を上げていただくためのサポートをすることは今後もより強化して取り組みたいです。現在力を入れているデータ分析チームとも協力しながら、コミュニティの中心となる人物を見つけていきたいですね。

ferret Oneとferret Oneユーザーが共に成長できるような独自のコミュニティ設計を考え、作っていきたいと思っています。

Shinya Kojiuchi

株式会社Asobica CCO
2010年、名刺管理システムのSansan株式会社に入社。データ化部門責任者を経て、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーへ。現在は、株式会社AsobicaにCCOとして参画中。

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