カスタマーサクセスの基礎解説|役割や担当者に必要なスキル

2023-11-16 コラム

企業が発展するにあたって「カスタマーサクセス」という要素を無視することができない時代となりました。しかし、いざ導入しようと思っても何をすればいいのか、「カスタマーサポート」と何が違うのかわからない人も多いでしょう。そのため、この記事ではカスタマーサクセスの基礎を解説します。

 カスタマーサクセスの定義

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「カスタマーサクセス」とは、直訳すると「顧客の成功」です。現在では主に「サブスクリプション型サービス」において重要視されている要素であり、能動的に顧客の成功体験を実現します。

カスタマーサクセスでは、提供するサービスの性質から「顧客は、こういった成功(ゴール)を目指している」ということをヒアリングして、それに必要なアクションやプランを積極的に提示します。それによって、顧客はカスタマーサクセスを通じて自身が求めている成果を得られるのです。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

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さて、「カスタマーサクセス」という言葉を初めて聞いた人でも「カスタマーサポート」については知っていることも多いでしょう。似ている言葉ですが、カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは実行する内容が大きく異なります。

 「カスタマーサポート」の役割

「カスタマーサポート」は、商品やサービスを利用する、または利用しようとするうえで知りたいことを提供側(企業など)に問いかけ、その質問に対して返答するアクションのことです。

例えば「○○の商品を使っていたら、××のトラブルが発生した、どうしたらいいの?」という質問が電話やメールフォームなどから問いかけられ、その質問に対して企業側が「△△すると解決します」と返答するというのが一般的な流れです。一般的に、カスタマーサポートは「受動的なアクション」となります。

 「カスタマーサクセス」の役割

一方でカスタマーサクセスの場合は、あらかじめ企業側で「顧客はこうした内容を求めるだろう」という仮説を設定し、それを各顧客に合わせてカスタマイズしながら、最終的に顧客を成功に導くよう積極的にアクションを行います。

カスタマーサポートが「受動的なアクション」であるのに対して、カスタマーサクセスは「能動的なアクション」となります。もちろん、顧客のすべての要望に対してあらかじめ応えられるわけではありませんが、中長期的な成長においてカスタマーサクセスの存在は極めて重要な役割を担うのです。

カスタマーサクセスの現状

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カスタマーサクセスという言葉を初めて聞いたという人も多いでしょうが、実際にカスタマーサクセスはどれほど認知・浸透しているのでしょうか?

欧米での支持率/注目度

カスタマーサクセスは、日本国内よりもどちらかといえば「欧米」において支持率の高いマーケティング手法だといえます。その仕事を専門に手掛ける「カスタマーサクセスマネージャー」という職種の浸透度合いが、それを物語っています。

「LinkedIn」が発表した「2018年最も将来性のある仕事」「2019年最も将来性のある仕事」の2つのランキングにおいて、カスタマーサクセスマネージャーという職種がランク入りしているのです。数ある仕事の中からカスタマーサクセスマネージャーという仕事は特に将来性を期待されている仕事である、それだけ欧米ではカスタマーサクセスという事業が重要視されているということでもあります。

日本での支持率/注目度

一方で日本ではどうなのかといえば、まだまだ新しい概念であり、浸透しきっていない印象を強く受けます。

「アイティクラウド」と「バーチャレクス・コンサルティング」が2019年に実施したネット調査(20~65歳のビジネスパーソン約2万6,000人を対象)によれば、カスタマーサクセスという言葉を耳にしたことがあるのは全体の約14%未満だったのです。つまり、ビジネスパーソン10人中8人以上が、カスタマーサクセスについて知らないということになります。

また、この調査においてカスタマーサクセスを知っている人のうち、勤務先においてカスタマーサクセスを取り組んでいるのは約25%、取り組み予定が約16%となっています。つまり、カスタマーサクセスについて聞いたことがあっても、実際に取り組んでいる(予定も含めて)のは全体の4割程度であるということなのです。

この傾向は「外資系企業」であるほどにカスタマーサクセスの実行度合いが強く、日系企業の2倍程度だとされています。

カスタマーサクセスが注目されてきた理由

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日本ではまだまだ浸透しきっていないカスタマーサクセスですが、それでも普及が進んでいることは間違いないでしょう。では、なぜカスタマーサクセスがここまで注目されるに至ったのでしょうか?

市場業界の成熟

1つ目の理由は「市場が成熟化した」ことにあります。

日本の市場では「経済のグローバル化」が進み、さまざまな日系企業が世界進出を果たしました。もはや、企業の成長にグローバル化を視野に入れないという選択肢はないといっても過言ではありません。

さて、グローバル化の促進は企業にとって「世界規模で競争できること」と同時に「世界中の企業と競合しなければならない」というステージに上がることにつながります。買い手側には商品の選択肢が多く、売り手側は限られた消費者を自社に引き寄せなければなりません。

さて、企業間(商品間)の競争において従来では「新機能」などの魅力で勝負するというのが一般的でした。しかし、グローバル経済においては国内での競争以上に他社による模倣がされやすくなり、わずかな期間で平凡化、陳腐化してしまいます。つまり、グローバル化した成熟した市場において、商品の機能面や技術面での競争力の確保は、もはや難しい時代になってしまったのです。

サービス業化への注目

2つ目の理由は「サービス業化の影響」です。

前述の通り、商品の機能や製造技術だけではグローバル市場において競争優位を確保することが難しくなりました。そこで差別化の要素の1つとして注目されたのが、保守メンテナンスを中心とした「サービス」の提供です。

サービス市場は、一般的な商品販売単独の市場モデルと比較して利益率が高いことが知られています。日本の製造業では以前から「製造業のサービス業化」の必要性が論じられていたのですが、今後はさまざまな業界においてサービス業化が注目されるようになるでしょう。

ソーシャルネットワークの普及

3つ目の理由は「ソーシャルネットワークの普及による経済のソーシャル化」の影響です。

日本でも、さまざまな媒体において「口コミ」や「レビュー」が普及しています。多くのユーザーが存在するSNSを利用することで、消費者は手軽に商品やサービスの「使い心地」などの情報を得られる時代となり、提供する側もその存在を無視できなくなりました。

口コミやレビューの影響力は強く、例えば「実際は美味しいのに、口コミで酷評されたことで『不味い店』のレッテルを貼られた」という飲食店もあります。すぐに拡散され、情報が簡単にシェアされる現代において、企業からの情報発信に依存しない「消費者間での情報共有」の影響を考慮することは、事業においても重要なポイントの1つとなったのです。

SaaS(サース)業界の発展

4つ目の理由は「SaaS(Software as a Service)業界が発展したこと」にあります。

SaaSとは、いわゆる「サブスクリプション型サービス」の1つです。SaaSに限らず、さまざまな商品やサービスがサブスクリプション型に変化して市場に流通し、ニュースでも取り上げられる機会が多くなりました。

さて、サブスクリプション型サービスの提供は企業側にもメリットがあるものの「消費者が離れやすい」というデメリットも抱えています。サブスクリプション型サービスで企業がより多くの利益を得るためには、ユーザー離れのリスクをできる限り減らすことが重要です。

従来の「販売すれば基本的にそれ以上の利益を得られない」という販売モデルと比較してSaaSなどのサブスクリプション型サービスは契約の獲得はあくまでもスタートラインであり、できる限り長く使い続けてもらうことが利益最大化の課題の1つです。カスタマサポートが必要な状況下では少なからずユーザーは商品・サービスに対して不満を抱えており、それが解約に繋がるのです。

共有経済化

5つ目の理由は「共有経済化(シェアリングエコノミー化)」です。

共有経済化とは、さまざまな商品やサービスの利用において、インターネットなどを介して共有化することです。いわゆる「持たずに利用する」時代であり、人々の消費行動は個別所有から共有財産を利用するスタイルへと変化しています。

例えば5人の消費者がAという商品を使いたいとすると、以前は5人それぞれが商品Aを購入する、つまり5個売れます。ところが5人で共有化することにより、商品Aが売れる個数は1個だけになるのです。共有経済化が進み、消費者に浸透することでさらに商品販売個数は減少し、市場が縮小化することが懸念されます。

カスタマーサクセスの主な役割

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そんな市場モデルの中において、カスタマーサクセスはどのような役割を果たすのでしょうか?

 顧客へ価値を提供

1つ目の役割は「顧客に価値を提供すること」です。

カスタマーサクセスというアクションは、顧客に対して相応の価値を生み出します。商品・サービスに対する不満の発生を防ぐことで顧客は商品・サービスから得られる満足度(価値)をより高めることができるのです。

逆に言えば、カスタマーサクセスの目標がずれてしまうと、顧客に価値を感じてもらうことはできません。その場合は顧客の意見に応じてカスタマーサクセスの内容も軌道修正し、より顧客目線での提案を行います。

業務・戦略内容の見直し

2つ目は「業務・戦略の見直し」です。

カスタマーサクセスでは、カスタマーサポートと比較してより多くの部署が連携して実施されます。「組織内でのオペレーション」と「事業におけるオペレーション」は無関係なものではなく、連動して機能しているのです。

カスタマーサクセスの実施は、その両方に対してアプローチします。適切なカスタマーサクセスの運用は、これらを切り離して提供されることはありません。カスタマーサクセスを通じて多くの部署にフィードバックされることにより、業務内容や戦略を見直すきっかけに繋がるのです。

サービス関連の顧客サポート・支援

3つ目の理由は「サービス関連の顧客サポートおよび支援」です。

ある商品Aがあるとします。この商品は多機能であり、顧客にさまざまな利便性を提供するというメリットがありますが、必ずしもすべての顧客が満足にその機能を利用できるとは限りません。これでは、顧客が商品・サービスから得られる満足度は減ってしまいます。

カスタマーサクセスは、そうした「顧客が出会うであろう問題」に対して、事前にアプローチします。「使い方」や「有効な活用方法」などを事前に情報提供することにより、顧客はその商品・サービスからより多くの満足度を得られるようになるのです。

カスタマーサクセス担当者に必要なスキル

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カスタマーサクセスを担う人材に必要なスキルは主に以下の5つです。

コミュニケーション能力

1つ目は「コミュニケーション能力」です。

カスタマーサクセスにおいては、顧客との密接なコミュニケーションが欠かせません。顧客のニーズを的確に把握し、それを解決する手段を提示する必要があるのです。そのためには、顧客の話を聞くだけでなく「聞き出して、本質を把握する能力」も必要になります。

カスタマーサクセスにおいては、つねに「顧客の成功」を念頭に置いて行動しなければなりません。そのためには独善的な考えに立つのではなく、熱意と行動力をもって顧客との信頼関係を構築し、ニーズを引き出すことが重要なのです。

俯瞰能力

2つ目は「俯瞰(ふかん)能力」です。

俯瞰能力とは、簡単に言えば「上から見渡す能力」のことをいいます。カスタマーサクセスでは顧客のニーズを聞き出すだけでなく、的確な対応・提案のためには得られた情報を分析する必要がありますが、その際には俯瞰の視点からの冷静な分析が欠かせません。

「傍目八目」という言葉があるように、第三者の視点から広く見ることで、当事者の立場では見えなかったニーズや課題が見えてくることもあります。これは顧客側にも可能なことではありますが、カスタマーサクセスでは積極的に顧客のニーズを達成することが目的であるため、顧客よりも早く確実に課題を見つけ出し、提案することが必要なのです。

分析能力

3つ目は「分析能力」です。

前述の通り、カスタマーサクセスでは冷静な分析が欠かせません。分析に必要なデータは、顧客の属性や動向、企業であればビジネスの状況や構造などを数値データで入手できます。

重要なのは、集めたデータを分析し、カスタマーサクセスの実施に活かすことです。いくらデータがあっても分析しなければカスタマーサクセスの質を高めることはできません。得られたデータを冷静に分析し、それをカスタマーサクセスの現場にフィードバックする能力が求められます。

解決能力

4つ目は「解決能力」です。

カスタマーサクセスでは、顧客が出会うであろう数々の問題と向き合う必要があります。分析する能力はもちろん必要ですが、直面する課題に対してどのような回答を示すことができるのか、その能力も欠かせません。

顧客がどのようなニーズを持っていて、どのような結果を望んでいるのか、それ以上の解決案を提示することがカスタマーサクセスにおいては求められます。もちろん、すべてのケースにおいてベストな解決案が実施できるとは限りませんが、顧客の意向などを踏まえて限りなくベストに近い解決案を提示する必要があるのです。

ブラッシュアップ能力

5つ目は「ブラッシュアップ能力」です。

ブラッシュアップとは「磨き上げる」ことであり、技術やシステムなどをより高いレベルに磨き上げることをいいます。カスタマーサクセスにおいてもブラッシュアップは欠かせないものであり、カスタマーサクセスに必要な仕組みやツール(機能)をブラッシュアップしなければなりません。

また、時代の流れによって既存のカスタマーサクセスでは十分に顧客の成功を導くことができなくなる可能性もあります。さらに、新しいSNSなどのツールが登場すれば、自社のカスタマーサクセスに活用することも検討しなければなりません。このように、移り変わる環境の変化に対してもつねに対応し、カスタマーサクセスをより磨き上げる能力が求められるのです。

カスタマーサクセス施策の注意点

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最後に、カスタマーサクセスを始めるにあたり注意すべき3つの事柄について解説します。

顧客はゴールを据えて分類する

1つ目に「顧客は『ゴール』を見据えて分類する」ことです。

顧客分類の手法として「タッチモデル」があります。タッチモデルでの分類は「サービスの適量な提供を実現する」「リソースの配分が適正に実施できる」というメリットがありますが、カスタマーサクセスにおいてはこれが必ずしも正しいとは言い切れません。

カスタマーサクセスの形は、顧客の属性や提供する商品・サービスにより異なります。カスタマーサクセス活動の大前提は「顧客の成功」であり、タッチモデルでの分類はあくまでも手法の1つでしかありません。顧客の成功を実現するためには「ゴール」に主眼を置いた顧客分類の手法が適しているといえます。

顧客への理解を怠らない

2つ目に「顧客への理解を怠らない」ことです。

カスタマーサクセスにはさまざまなリソースを投じるわけですから、相応の成果を出せる仕組みでなければなりません。ところが、それに固執すると本質である「顧客の成功を実現する」こととはかけ離れてしまう可能性も捨てきれないのです。

適切な形でカスタマーサクセスを運用するためには、サービスの価値を顧客に正しく理解してもらうだけではなく、商品・サービスおよびカスタマーサクセスの提供者である自社も顧客を理解すべきです。成功に導きたい主体である顧客についての理解がなければ、カスタマーサクセスもその本質を失ってしまうでしょう。

解約率よりも継続率を参考にする

3つ目に、カスタマーサクセスにおいて重要視すべきなのは、解約率ではなく「継続率」です。

サブスクリプション型サービスにおいて着目される数値は、「解約率」と「継続率」の2つがあります。それは、サブスクリプション型サービスにおいて利益を最大化するためには、できる限り長く利用してもらうと同時に、より高額なサービスの利用にステップアップしてもらう必要があるためです。

そのため、カスタマーサクセスの質を高めるにあたっては、解約率だけではなく継続率も考慮する必要があります。オンボーディング(使い方などを把握する期間)が正しく完了すれば、解約率は減少し、以降はアップセル・クロスセルの段階につなげられるのです。


解約(チャーン)防止や、LTV向上のためには、まずは適切なカスタマーサクセスのやり方を把握し、効率的に課題解決を進めていく必要があります。
CXinでは、カスタマーサクセス体制構築のお手伝いとなるよう、実際のカスタマーサクセス現場の声をもとにした【カスタマーサクセス白書】を無料配布しております。ぜひご活用ください。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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