ナレッジマネジメントとは?意味や導入するメリットを解説

2023-07-24 コラム

ビジネスを成長させ、成功に導くためにはさまざまな手法を取り入れ、実践していくことが必要不可欠です。日本のビジネス形態と相性の良い手法として「ナレッジマネジメント」という手法があります。本記事ではそんなナレッジマネジメントの内容や導入メリットについて解説します。

ナレッジとは?ビジネス用語としての意味と使い方

ナレッジマネジメントの基礎知識

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ナレッジマネジメントとは、企業が蓄積した知識や経験、要するに独自の営業ノウハウや顧客情報などを社内全体で共有し、企業としての競争力を活性・向上させる経営手法のことです。

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形式知と暗黙知

ナレッジマネジメントについて理解するうえでは、「形式知」と「暗黙知」という2つの事柄について理解することが重要です。

「形式知」とは、言語化されている客観的な知識のことで、主観的となっている知識を図表や文章を活用して共有できる形にしたものをいいます。勉学で言うところの「座学」に相当するものであり、マニュアルや口頭伝達などで伝えることのできる知識のことです。

「暗黙知」とは、言語化されていない主観的な知識のことで、個人の経験などから構成される知識のことをいいます。勉学で言うところの「実技」に相当するものであり、練習や実践を繰り返すことで経験を積むことで習得する知識のことです。

一般的な「知識」と呼ばれる存在は、これら形式知・暗黙知のいずれかに分類することができ、企業などの組織に蓄積される知識も2つのいずれかに分類することができます。主観的で言語化されていない暗黙知は、第三者にこれを伝えようと考えても正確な落とし込みが極めて難しいのです。

一方で言語化されており客観的である形式知は第三者との共有がしやすいため、企業に蓄積された知識を全社で共有するためには暗黙知に分類される知識をいかに形式知に変換できるかが重要になります。

注目されている理由

ナレッジマネジメントが日本でも注目されるようになったのは、「チームワークに重きを置く」という日本の企業形態とナレッジマネジメントの相性が良いことに由来します。

しかし、大きく発達した現代のビジネス社会において、「従来のナレッジマネジメント」を継続運用するのは難しくなっています。そのため、昨今新たに見直された手法が展開されはじめているため、その手法を理解して自社に取り入れることがナレッジマネジメントの有効活用になるのです。

ナレッジマネジメントを導入するメリット

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ナレッジマネジメントをうまく活用していけば、以下のような3つのメリットが得られるでしょう。

重要な情報を組織全体で共有しやすい

ナレッジマネジメントの基本は「知識の共有」であり、ビジネスに取り入れることで重要な情報を企業・組織の全体で共有できるというメリットがあります。

ビジネス活動において、さまざまな経験から知識が蓄積していきます。ビジネス活動によって蓄積された知識を全社員で共有することで、1人の経験が社員全員の経験となります。

問題は、経験則のような暗黙知をいかにして形式知に変換し、共有しやすい形にしてから共有の流れに組み入れることができるかです。貴重な経験・重要な情報も、共有しやすい形にしなければ正しく共有できないし、共有完了までに膨大な時間がかかってしまうでしょう。

業務の最適化につながる

ナレッジマネジメントをうまく活用することで、いわゆる「成功パターン」を形式知化し、社内全体の業務効率の改善につながります。

例えば、ある有能な社員が知っている成功パターンがあるとしましょう。成功パターンを部署内の他のメンバーが共有できれば、多くの社員が成功パターンを実践して利益をあげてくれます。営業部門のような売り上げに直結するような部署での成功パターンの共有化は、短期間での人材育成とそれに伴う短期間での増収につながる可能性が高いのです。

本来、優秀な人材を育成するためには膨大な教育コストがかかります。ナレッジマネジメントによって役立つ知識・経験を共有しやすい形にして共有することで教育にかかる時間・コストを削減し、効率的に売上アップにつなげることができるでしょう。

顧客への対応の差を軽減できる

ナレッジマネジメントを活用することで、自社から顧客への対応における「担当者の違いによる対応の差」を軽減するという効果も期待できます。

前述の通り、ナレッジマネジメントは社員の成功パターンなどの経験を形式知化し、他のメンバーもその知識を活かして仕事に取り組むことができるようになる仕組みです。サポート担当のスタッフのように多くのメンバーが多くの顧客を相手にするような部署の場合、適切かつ丁寧な高品質な対応ができるメンバーと、そうでないメンバーの差を埋めるのは経験則に基づくところが大きいといえます。

ナレッジマネジメントによって適切な対応の仕方を形式知化して共有できれば、担当者の全員が同じ水準で顧客に対応することができます。顧客への対応の良さは「顧客満足度」「顧客成功体験」の向上につながり、最終的に自社の利益につながるのです。

ナレッジマネジメントの4つの手法

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次に、ナレッジマネジメントを導入するにあたって、主に用いられている手法4つについて解説します。

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経営資本・戦略策の定型化

この手法は、企業・組織内の知識を多角的に分析し、今後の経営戦略に活かす手法です。

この手法で分析するのは、主に企業・組織の内外が対象となり、何らかの専用システムを用いた分析が必要になるケースが多いです。自社の事例だけでなく、競合他社の事例に関しても分析の対象とし、その結果を戦略的な判断を下す際の判断材料として役立てます。

この手法の良いところは、業務プロセスを洗いざらいにして、その見直しを図ることで改善すべきポイントを見極められるという点です。新しい業務プロセスを組みなおすにあたって従来の手法での問題点を明確にし、より優れた業務プロセスの構築を目指すことができます。

顧客知識の共有

この手法は、顧客優先というスタンスをベースとして、業務に関する知識だけでなく業務プロセスも見据えた知識を提供する手法です。

顧客から得られた意見やクレームの内容などの情報に加えて、対応した方法や結末など一連の情報をデータベース化します。同じようなトラブル等が発生した際にそのデータベースを参考にして、迅速かつ適切な判断・対応が可能になるのです。コールセンター業務であれば、最適な回答方法や対応手段などを担当者の間で共有でき、さまざまな顧客に対してどの担当者でもスムーズに対応できるようになるでしょう。

また、データベース化して共有化しやすくすることで異なる部署間でもデータベースを共有できるようになります。これにより部署間での対応の差がなくなり、顧客満足度や顧客成功体験の向上につながります。

ベストプラクティスの共有

この手法は、企業・組織内で規範・模範となるような社員の行動や思考パターンを形式知化して、これを全体で共有する手法です。

この手法を活用することで社内全体のスキル・能力の底上げが可能になります。いわゆる「勝ちパターン」や「成功パターン」を知っている優秀な社員の能力をコピーして、それを全社で共有することで優秀な対応方法を可能とする社員を増やすのです。

重要なことは、思考や行動といった暗黙知をいかにして形式知化して共有しやすい形にできるか、ということです。可能な限りわかりやすい形にすることで正しく共有化することができるようになり、共有内容の劣化を防ぐことができるでしょう。

専門知識のデータ化

この手法は、企業・組織の内外の専門知識をネットワークを通じてデータベース化して、効率的に情報を提供する手法です。

企業内で質問されることの多い内容をFAQ形式にまとめることで情報を引き出しやすくし、必要な情報をすぐに取り出せるようにします。これにより企業の内外から問い合わせが集中する部署(情報システム部門やヘルプデスクなど)の負担が軽減され、対応が必要な際には迅速かつ高品質な対応が可能になります。

これまで人の手によって口頭伝達されていた内容を一元化することによって、質問した人によって異なる回答をすることや、間違った知識が共有されるリスクが解消されるというメリットもあります。必要に応じてFAQ内容を見直すことで、より質の高い情報共有を可能にします。

ナレッジマネジメントの導入・運用の流れ

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次に、企業・組織にナレッジマネジメントを導入するにあたっての、導入決定からの運用の流れについて解説します。

目的を確立する

まず最初に、「ナレッジマネジメントを導入する目的・ナレッジマネジメントを導入することで何を解決したいのか?」を明確にします。

ナレッジマネジメントの基本的な目的は「情報をスムーズに共有できるようになる」ことですが、その基本的な目的だけを念頭に置いてナレッジマネジメントを導入しても企業の利益につながる可能性は低くなります。ナレッジマネジメントの導入で社内・組織内の知識を共有しやすくして、それで何を達成したいのかを明確にしなければ、適切なナレッジマネジメントの構築はできません。

重要なことは「ナレッジマネジメントを導入すること自体を目的にしない」ことです。ナレッジマネジメントはあくまでも問題解決の手段であり、それ自体が目的にはなりません。ナレッジマネジメントを導入・運用することで達成したい課題・解決したい問題を明確にしたうえでナレッジマネジメントの本格的な導入に入りましょう。

可視化する情報・共有する情報を明確にする

ナレッジマネジメント導入の具体的な目的が定まったら、次は「どんな情報を共有するのか?」を明確にします。

ナレッジマネジメントを導入する目的(何を解決したいのか?)が明確になったら、共有すべき情報や知識が何であるかも見えてくるでしょう。もちろん、社内・組織内の知識すべてを共有化できればさまざまなメリットがありますが、共有対象となる知識・情報が多いほどナレッジマネジメントの運用には大きな労力が必要となります。

ナレッジマネジメントを導入する目的を達成するために必要な情報は、社内・組織内のすべての知識ではないはずです。共有するべき情報の優先順位を把握し、導入の目的を達成するために効果的・効率的な情報を選別して共有の対象として見定めてください。

業務への反映方法を決定する

共有するべき情報の優先順位を決めたら、次は「業務への実際の反映方法」を決める段階となります。

業務プロセスにナレッジマネジメントの仕組みをどのように落とし込むか、具体的な手段として決定します。しかし、最初から新しい業務プロセスを全体的に移行させることは、現場の負担が大きく、ナレッジマネジメントの失敗を招くことになるでしょう。

そのため、最初は小さいところからスタートし、段階を踏んで少しずつ新しい業務プロセスに移行していくことが望ましいです。現場の意見を参考にしつつ、少しずつ新しい仕組みを現行の業務プロセスに落とし込んでいきましょう。

運用後はPDCAを回しながら改善を繰り返す

ナレッジマネジメントを実際の現場に落とし込んで運用できるようになったら、「PDCAサイクルを回しながら改善を繰り返す」ことが重要です。

ナレッジマネジメントは、いかに導入までの段階が完璧・綿密であったとしても、運用していく中で少しずつ「ずれ」が生じるでしょう。導入時には必要だと考えられていた情報が実はあまり役に立たなかったり、現状の問題点を別のツールを導入することで改善できるなど、見直すべきポイントは多いのです。

この改善・見直しには、ナレッジマネジメントに関わっている現場の担当者の意見を参考にすることが重要です。現場の声を聞きながら必要な改善を明確にし、それを現場にフィードバックして再び分析し、少しずつ改善を繰り返しながら適切な形に修正していきましょう。

ナレッジコミュニティとは?導入のメリットを解説

ナレッジマネジメントの運用に成功した企業の事例

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では、実際にナレッジマネジメントを導入し、運用したことで成功を得た企業の事例を2つ紹介します。

NTT東日本法人営業本部

「NTT東日本法人営業本部」では、「リアルな場」と「バーチャルな場」を整備して情報共有を促す仕組みが導入されています。

「リアルな場」としては「ベースゾーン」「クリエイティブゾーン」などの4つの領域が整備され、対面で実際のコミュニケーションを行う環境を整えることで作業効率やコミュニケーションが最適化されています。「バーチャルな場」では各社員のホームページを通じて情報共有やコミュニケーションが最適化されています。

株式会社LIXIL

「株式会社LIXIL」では、ナレッジマネジメント用ツール「Accela BizAntenna」を導入しています。このツールを活用することで、現場で培われていたノウハウを、社内全体で共有することに成功しました。各工場で培われてきたノウハウが共有されることによって、全体的な生産性の向上や、従業員のモチベーションアップにつながったのです。

ナレッジマネジメントの運用におすすめのツール

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ナレッジマネジメントの効果的な運用には専用のツールを利用するのがおすすめです。そこで最後に、ナレッジマネジメントを活用したい企業におすすめしたい、評判の良いツールを4つ紹介します。

サイボウズ ガルーン

「サイボウズ ガルーン」は中堅~大規模の企業向けのグループウェアで、全社の情報共有を一画面に集約することができます。さまざまな切り口でポータルを作成することで情報発信が可能となっており、組織内の散在している情報を効果的に整理・統合して共有できます。

Neuron

「Neuron」は企業内検索エンジンであり、社内に保存されている情報を検索するためのツールです。操作性が良く必要な情報を簡単に入手でき、検索した情報を活用して業務効率を改善できます。月額8万円から導入でき、低コストで社内検索システムを導入したい企業におすすめです。

DocBase

「DocBase」は社内で散在している情報を一元化し、必要な情報を必要なメンバー内で共有できる情報共有サービスです。ツール内の情報は検索がしやすいことが評判で、内外での情報共有がしやすくなっています。1ユーザーあたり月額200円から導入でき、コストパフォーマンスが良いことでも知られています。

esa.io

「esa.io」はDocBase同様にコストパフォーマンスの良い情報共有ツールです。ツール内の文書は階層構造で管理さえ手織り、タグなどで検索する場合と比較して手間がかかる可能性がありますが、タグ管理の手間がかからないというメリットがあります。1ユーザーあたり月額500円と料金設定が明瞭であり、導入しやすいのが特徴です。


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cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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