トップシェアを走り続けるコンカーのカスタマーサクセスを大解剖

2023-07-24 イベント

2021年11月17日に開催したオンライン対談イベント『トップシェアを走り続けるコンカーのカスタ マーサクセスを大解剖』では、株式会社コンカーよりカスタマーサクセス本部の千葉氏、金氏、そ してマーケティング本部の松木氏にご登壇いただき、株式会社Asobica取締役CCOの小父内信也氏がモデレーターを務めました。

今回イベントに参加できなかった方にもお楽しみいただけるよう、本レポートではイベントの内容をダイジェストでお届けします。

千葉勝博 氏(以下、千葉)
株式会社コンカー カスタマーサクセス本部 第一部 部長

金小伊 氏(きむ そい)(以下、金)
株式会社コンカー カスタマーサクセス本部 第三部 部長

松木綾子 氏(以下、松木)
株式会社コンカー  マーケティング本部 クライアントマーケティングマネージャー 

小父内信也 氏
株式会社Asobica 取締役CCO

会社概要

千葉:まず、コンカーの会社概要とカスタマーサクセスについてお話しいたします。

弊社は出張・経費管理のクラウドサービスを提供している会社です。1993年にアメリカ合衆国シアトルで設立されました。現在では全世界で46,000社の企業様に導入いただいており、ユーザー数は6,600万人になります。日本法人は2010年に設立され、2021年11月時点で従業員数は322名、導入企業数は1,350企業グループと、沢山のお客様とお取引させていただいております。

松木:外資系企業様だとAPACという枠組みの中でアジア太平洋地域をまとめていることが多いと思いますが、コンカーに入社して驚いたのはAPACではなく「ジャパン」という独立した括りがあることですね。

小父内:それはすごく珍しいですね。

コンカーのカスタマーサクセス

(コンカー様作成資料より抜粋)

千葉:続いてコンカーのカスタマーサクセスについてお話しいたします。私たちコンカーのCS(カスタマーサクセス)は、『時には言いたくないことも社内外に伝え、サスティナブルな関係を築き「経費精算のない世界」の実現までお客様と伴走します』というミッション・ビジョンを掲げています。

そのため、CSだけが頑張るのではなく、他部門としっかりと連携して一緒にお客様をご支援していこうという気持ちを持って取り組んでいます。

また、コンカーのCSはオンボーディングが終わった後にアサインされるという特徴があります。コンカーの導入プロジェクトは長いものだと一年を超えることもあるため、オンボーディングは導入の専門チームが担当しております。システムが稼働した段階でCSがしっかり引き継ぐ、という形になっています。

5つの部門で構成されるCS組織

続いてCS本部の体制についてお話しします。

ディストリビューション統括本部というのがいわゆる営業部門なのですが、私たちカスタマーサクセスはこの中に属しています。

そしてさらにCS本部は5つの部門によって構成されており、第一部・第二部・第三部にはそれぞ れカスタマーサクセスマネージャー(以下CSM)がいる体制になっております。それから特徴的な のはClient Salesという、既存のお客様を対象とした部門があります。アップセルやクロスセルがある場合はこちらのCSが担当する形になっております。

顧客を3つのセグメントに分け最適なタッチポイントを設計

ここからはCSの取り組みについてお話ししたいと思います。私たちは企業規模に応じてお客様を3つのセグメントに分けています。

大企業のお客様はハイタッチで、毎月もしくは少なくとも四半期に一回は定例会をさせていただき、その中でビジネスアップデートやご利用状況のご報告をしています。また、海外の法人やグループ会社をお持ちであることが多いので、エキスパンションをご提案したり、アップセルやクロスセルをご提案したりしています。

中堅/中小企業のお客様はミドルタッチと言い、ハイタッチとデジタルタッチの中間と位置付けています。

中小企業のお客様は、上位版のプロフェッショナルと一般的なスタンダードという2つの製品プランのうち、スタンダードをご利用いただいているお客様が主に該当します。ご利用企業数が多いため、基本的にはデジタルタッチとして、ウェブやメルマガによる便利情報の配信や、自主学習ツールのご紹介をしています。

ハイタッチのカスタマーサクセスの取り組み

千葉:続いて、大企業向けカスタマーサクセスの主な取り組みをいくつかご紹介します。

成熟度マップを顧客と共有。ステップアップには2つの要素が関係している

まず1つ目が「成熟度マップ」です。

私たちは、お客様に具体的にどのように「経費精算のない世界」 を実現していくのかをご提示するために、このマップをお見せして導入効果最大化へ向けた具体的なイメージをお客様と共有し、このマップを使いながらお客様と定期的にコミュニケーションをとらせていただいております。

こちらは2021年に作ったもので、すでに導入プロジェクトの方ではお客様にご提示してプロジェクトを進めています。既存のお客様にもお見せして、課題感を抱えている領域を比較していただき、その改善に向けて私達CSも取り組んでいます。

小父内:従来の世界から経費精算のない世界までにStage1からStage5までの区分けがありますが、このステップアップはどのくらいで上がるものですか?

千葉:早いものだと数ヶ月でステージは上がります。ステージを上げるためには大きく分けて2つの要素があると考えていて、1つはコンカーの機能で、もう1つはお客様の社内の仕組みです。

私たちの機能をご採用いただいたり、テクノロジーを上手く使っていただければステージをあげていくことは比較的容易ではありますが、お客様の社内の仕組みや業務を変えていただくことには 社内の合意形成なども必要になるため、時間がかかるケースが散見されます。

分析レポートで導入効果を可視化&運用課題を再発見

千葉:2つ目の取り組みが分析レポートです。

こちらはお客様に定期的にお渡ししている経費精算の分析レポートで、導入効果の可視化や運用課題の気づきを見つけていただくことを目的としています。

小父内:今までかかっていた工数がどれだけ削減されたか、ビフォーアフターをお見せするということですね。ちなみにこういった分析に際して使用しているツールはなんでしょうか?

千葉:コンカーの中に分析機能があり、そちらを使用しています。

ヘルスチェックサービスで長期利用顧客の潜在課題を発見し、ベストプラクティスを提案

千葉:3つ目の取り組みが「ヘルスチェックサービス」です。

こちらは長らくご利用いただいているお客様を対象にご案内しているサービスです。導入してから数年経つと「運用は安定しているけれど導入当初には気づかなかった課題が見つかった」、「ユーザーの満足度がいまいち上がらない」というお話が出てきます。それに対する打ち手として生まれたのがこちらのサービスで、お客様のシステムや業務をもう一度拝見し、弊社内のベストプラクティスと照らし合わせながら改善活動をサポートしていく取り組みです。

小父内:こういった取り組みを始めるきっかけは何かあったのでしょうか?

千葉:やはり導入から数年が経つと当初の課題が解決された状態が当たり前になってインフラ化していきますので、別の新しい課題を見直し ていく必要があると感じたことがきっかけです。

ミドルタッチ/デジタルタッチのカスタマーサクセスの取り組み

金:ここからは中堅・中小向けのカスタマーサクセスの取り組みについて私からご紹介いたします。我々のサービスにはProfessionalとStandardという2つのエディションがございますが、昨年よりStandardを導入されているお客様もCSMにて担当しています。

Professionalでは半年くらいの期間をかけて導入プロジェクトを組んでいますが、一方でStandardは お客様側で設定いただくことが可能なため、動画や学習ツールを元にお客様にて順次設定を実施していただいており、導入は約2ヶ月くらいで完了、その後稼働という形になります。

Standardは稼働後もお客様ご自身で設定を変更できるシンプルなサービスのため、その価値をご評価いただき、多くのお客様に継続的にご利用いただいております。

小父内:Professional(大企業・中堅企業)とStandard(中小企業)という区分けをしている理由は求められるニーズが異なっているからでしょうか?

金:そうですね。費用面でも、上位版のProfessionalは導入の費用がStandardに比べてかかりますが、 お客様のご希望要件が複雑な場合にはやはりProfessionalでないと実現できないことがあります。

続いて、中堅・中小向けのカスタマーサクセスの動きについてご紹介します。基本的にはミドルタッチを採用していますが、大企業向けカスタマーサクセス担当 と同様にお客様ごとの個別対応も実施しています。コロナ禍がトリガーになり、多くのお客様とオンライン会議を実施できているのは大きなメリットです。弊社の強みである電子帳簿保存法対応のご支援や最新情報をオンライン会議でお伝えしています。

また、それと並行して仕組み作りにも注力しています。

デジタルタッチの部分ではお客様のフェーズごとにメールを定期的にお送りしたり、最新情報やウェビナー情報をニュースレターとして配信しています。加えて、お客様向けポータルサイトを運営しています。こちらは2021年に開始した取り組みで、カスタマーサクセスやマーケティングを含む各部署から横断的にメンバーを集め、運営しています。

よくいただく質問などは、まずはこのお客様向けポータルサイトを見ていただけるような動線を設計し、お客様ご自身で自己解決力を高めていただけるような仕組み作りをまさに今考えているところです。

また、カスタマーサクセス主催のウェビナーも開催しており、メンバーが登壇して最新の話題をお届けしたり、他部署と連携し各種パートナーサービスとの連携を促進したりしています。企画段階からカスタマーマーケティング担当と密に連携しコンテンツをお届けしています。

小父内:金さんの部門ではKPIはどのように設定なさっていますか?

金:弊社は毎年KPIを見直しているのですが、Standardの部分でいうと、今年はポータルをリリースしたこともあってその構築や登録率をKPIとしているほか、お客様の事例の作成もKPIに入れていますね。

小父内:事例を作成するにあたって工夫されていることはありますか?

金:モチベーションの高いお客様は新しいサービスの対応や電子化の対応を次々と積極的に推進されているので、そういったお客様にお声がけしたり、日々のリレーションを強化することを意識しています。

また、こうしたリレーション構築の中で、イベントにご登壇いただくこともあれば、個別に別のお客様とお引き合わせさせていただくこともあります。同じ課題感を持ったお客様にご説明する際、我々からお話しするのではなくお客様からお話しいただいた方がヒントが得られるということもあるため、そういったご依頼をさせていただくこともあります。

カスタマーマーケティングの取り組み

松木:最後に私、松木からカスタマーマーケティングの主な取り組みについてお話しいたします。

まず、今日ご参加いただいている皆様にお聞きしたいのですが、カスタマーマーケティングに専門的に取り組む部門が自社にあるという方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか?

最近ではそういった企業様が少しずつ増えてきている印象ですが、私がコンカーに入社した一年半前ではかなり珍しかったと思います。コンカーはグローバルが先行して充実したカスタマーマーケティングを提供していたため、それにならって日本でも一年半前にポジションができ、活動を開始しました。

グローバルではカスタマーライフサイクルを7つのステージに分けていて、各ステージごとに誰にどんなコンテンツを届けるかというコンテンツストラテジーを考案しています。

(コンカー様作成資料より抜粋)

まずデリバリーチームが導入から稼働までを担当します。そしてCSチームが稼働してから運用を定着させ、さらに運用を最適化してお客様に使いこなしていただいて、契約を更新していただき、 他のお客様にご紹介していただけるくらいに信頼関係を築くところまで伴走していきます。そして サポートチームはこの間の技術的な支援を行います。加えて、顧客向けインサイドセールスが専門で存在しており、追加契約のリードを育成して顧客向け営業にパスするという仕組みになっています。

小父内:顧客向けインサイドセールスが存在するのは面白い取り組みですね。

松木:そうなんです。通常の新規向けインサイドセールスと違って、運営最適化のご支援やお客様の定着率に関するKPIを持っています。

そしてクライアントマーケは全てのステージを広くカバーするような形で、様々な部門と連携しながらその時お客様が必要とする情報を最適な形で届けるための仕組み作りとその運用をミッションとしております。

クライアントマーケティングはマスアプローチが得意ということで、お客様向けの情報ポータルサイトを作って運営したり、デジタルタッチでお客様の必要とするタイミングで届ける仕組みを作ったり、オンラインのセミナーの開催などに注力してきました。

ポータルサイトにより活用情報が一元化。顧客に応じた最適な情報提供が可能になったことで開封率は従来の2倍に

続いてその顧客限定の情報ポータルサイトについてお話しします。「Concur Navi」と命名しており、トップ画面には弊社の「レシートモンスター」というキャラクターが載っています。このモンスターをやっつけるためにConcur Naviを使って経費精算のない世界の実現を目指すというコンセプトになっています。

(コンカー様作成資料より抜粋)

お客様が製品を活用するための情報があちこちに散在していたという課題があったため、それを一元化できたこと、またお客様ごとに最適な情報を提供できるようになったことがポータルサイトの大きな価値であったと思います。

効果的にポータルサイトの情報をご提供するために目的に応じてツールを使い分けています。ニュースレターなどはMarketoというツールを使って一斉メールを配信していますが、導入3ヶ月後のお客様が特に必要とするような情報や、お客様のスケジュールに応じて必要とする情報に関しては、それに適したカスタマーサクセスツールを使ってご提供しています。

このようなカスタマーライフサイクルに応じたメール配信は今年の頭から開始した取り組みなのですが、通常のニュースレターの配信に比べて開封率が倍とかなり多くなっています。やはりお客様の状況に応じて情報発信することがデジタルではすごく効果的なんだなと感じています。デジタルタッチを推進しているStandardを多くご利用いただいている中堅・中小企業のお客様を対象に配信していますが、大企業のお客様向けにもこういった配信をし始めています。

さらに、デジタルだけだとどうしてもお客様にとって分かりづらい部分もあるかと思いますので、特に導入段階のお客様に対して、どういった流れで導入が進んでいくのかを紙でガイドする「ウェルカムキット」の取り組みも始めました。

また、お客様ごとにマニュアルをカスタマイズしたいというお声があったので、PowerPointでマニュアルのテンプレートをお届けしています。基本的な流れを提示した上でカスタマイズが可能な仕様になっており、お客様からご好評いただいています。こちらは主にStandardをご利用いただいているお客様にお渡ししています。

ニュースレターもお客様のセグメントによって必要とされる情報が異なりますので、毎月2〜3パターンご用意してお届けしています。カスタマーサクセス部門の皆様のご協力もあってお客様の中で認知が徐々に拡大しており、配信ボリュームは1年半前と比べて2倍に成長しています。

小父内:分析レポートやヘルスチェックサービス、ニュースレターなど顧客のセグメントとステージごとに最適なコンテンツを届ける仕組み作りをなさっているということですね。また「レシートモンスター」というキャラクターを設定して、アイコンとしていることも特徴的で大変面白いですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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