執筆:小父内信也
株式会社Asobica CCO
2010年、名刺管理システムのSansan株式会社に入社。データ化部門責任者を経て、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーへ。現在は、株式会社AsobicaにCCOとして参画中。
2019年11月26日に開催した『成功企業と最新事例から学ぶ カスタマーサクセス最前線』にて、カスタマーサクセスに注力されている2社の担当者様に登壇いただきました。当レポートでは、そのイベントのパネルディスカッションの内容をお届けします。
<登壇者>
丸田絃心 氏 (以下 丸田)
株式会社ABEJA カスタマーサクセスマネージャー
山田尚孝 氏 (以下 山田)
Sansan株式会社 カスタマーサクセス部 シニアカスタマーマーケティングディレクター
<モデレーター>
小父内信也 氏 (以下 小父内)
Sansan株式会社 Eightコミュニティマネージャー 兼 株式会社Asobica CCO
小父内 : 本日はよろしくお願いいたします。カスタマーサクセスの役割とは何でしょうか?
丸田 : カスタマーサクセスの役割は、顧客の現実と理想のギャップを埋めることだと思います。製品内容が複雑、あるいは企業側の説明不足などの理由により、顧客の理解度が低い場合、顧客は製品を活用しきれず、価値を感じることができません。当然ですが、そのような状態を放置すれば、満足度の低下や解約が起きてしまいます。そうした事態を防ぐため、カスタマーサクセスには、顧客の状態を理解し、ギャップを取り除く役割が求められるのです。
小父内 : カスタマーサクセスの立ち上げ初期は、何から取り組むのがよいでしょうか。
山田 : 顧客の成功を目指すのがカスタマーサクセスですが、最初から「チャーン(解約率)の低下」や「ネットリテンション(既存顧客維持率)の向上」を目標に定めても、達成するには何年も時間がかかるため、実感が湧きません。
そこで、カスタマーサクセスの立ち上げ初期は、カスタマーサクセスの観点で自社のコストの削減を意識して取り組むことをお勧めします。カスタマーサクセスの発想を活かして、「営業への問い合わせ」や「よく聞かれる質問への対応」など、日々発生する既存顧客に対する問題を解決することから始めるのが良いと思います。
小父内 : カスタマーサクセスにおけるKPIはどこに定めていますか。
山田 : 「オンボーディングにおいてはその成功率、それ以降はチャーンとエクスパンションの不合計金額(ネットリテンション)」です。
小父内 : ありがとうございます。加えて、オンボーディングについては、KPIをどこに定めていますか。
山田 : 初期段階では「IDの割り振り率」など、プロダクトを利用する前提条件が整っているかどうかをKPIに設定しています。プロダクトとしては、利用率など実質的な数値が気になりますが、利用の前提を満たしていないケースも多いからです。
小父内 :ちなみにオンボーディングの際に重要なポイントはありますか。
山田 : あらかじめ「オンボーディングの期間と成功・失敗の定義を決めておく」ことが重要です。それらが曖昧のままオンボーディングを実施してしまうと一向にPDCAサイクルが回りませんが、定義できている企業は少ないです。
小父内 : 他部署との連携では、どのような工夫をされていますか。
丸田 : 営業とカスタマーサクセスの部署間でKPIを共有しながら施策を行なっています。例えば、マーケティングを目的としたイベントでは、成功事例を生み出すまではカスタマーサクセスが役割を担い、参加者に成功事例や活用事例を共有する資料の作成は営業が担っています。顧客の事例を適切に紹介しなければ、ターゲットとなる顧客を巻き込めないからです。
その他には、開発担当者にも顧客がサクセスしていく過程を一緒に体験してもらうために、カスタマーサクセスの会議に参加してもらったりもしています。
山田 : 私たちは、営業がクロージングする際に、カスタマーサクセスの内容を盛り込んだクロージングマニュアルを用いて説明することに注力しています。
営業メンバーのクロージング手法によっては、受注後のカスタマーサクセスが困難になります。このような状況に陥らないため、マニュアルにはカスタマーサクセスの具体的な内容やチームメンバーの情報が記載されています。また、営業メンバーとしても、クロージングマニュアルを読むことで、カスタマーサクセスの活動内容への理解が深まります。
小父内 : これからのカスタマーサクセスに関しては、どのように考えていますか。
山田 : レバレッジが利く、とても面白い職種だと思います。
カスタマーサクセスをするためには、顧客のことを知り、先回りして障壁を取り除く必要があります。サブスクリプションモデルのサービスが増え、事業を伸ばすために顧客の解約防止が必要不可欠なこれからの時代において、カスタマーサクセスの思考体系を養うことは大きな価値となります。最近では、顧客の成功に向き合うことが好きな異業種の人が、カスタマーサクセス職にキャリアチェンジするといったケースも増えています。
丸田 : これからは、カスタマーサクセスが競合サービスとの比較検討材料になる時代が来ると考えています。ツールだけ提供しても、顧客の現実と理想の間のギャップを埋められず、課題を解決できません。カスタマーサクセスの貢献が、顧客の事業成長の肝になっていくと思います。
イベント参加者:顧客数が増加するほど、カスタマーサクセスの負担が大きくなります。どのように対応するのがよいでしょうか。
山田 : 新しい人材を採用しつつ、テックタッチの体制を整えていくことをお勧めします。確かにある程度の規模までは人力で丁寧に対応できますが、一定の人数を超えると、コミュニケーションコストがかかります。テクノロジーによるサポート体制を活用できれば、カスタマーサクセスの負担を減らすことができます。
丸田 : 私たちの会社では、コミュニティ内で顧客同士の助け合いによる疑問の解決やノウハウの共有など、顧客同士がサポートし合える状態を作ることで、カスタマーサクセスの体制が上手く回るようになりました。カスタマーサクセスのメンバーによる対応だけでは限界があるため、ユーザーコミュニティを活用するという方法もお勧めです。
執筆:小父内信也
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