今だからこそ考えるコミュニティのあり方と未来の姿(小島英揮氏×小父内信也氏 特別対談)【後編】

小島英揮氏と小父内信也氏によるリモート特別対談。
前編ではコミュニティのあり方やその効果測定についてお聞きしました。
後編となる本記事では、新型コロナウィルスが猛威を振るう現在の状況も踏まえ、今後のコミュニティ構築について伺っていきます。

コミュニティの火のつけ方ーオフラインファーストの真意

小父内:今、世の中は新型コロナウィルスの影響で、小島さんが提唱されているコミュニティ構築の定石である「オフラインファースト」の実践が難しいなか、どうしていくと良いと思いますか?

小島:コミュニティを構築していくときに大事なのが、立ち上げ時にメンバーの熱量の種火をしっかりと「発火」させ、その熱量の火を他のメンバーに伝播させていくモデルです。
このメンバーの熱量のファシリテートは、オンラインで実現することが不可能なわけではないですが、相当な力量が必要です。

だから、僕はオフラインからスタートした方が「成功確率が高い」という意味で、オフラインファーストという言葉を使用しています。
この言葉を強調する意図は、「オンラインでも出来ますよ」と言ってしまうと、どうしても効率や数を求めて、コミュニティ構築をオンライン主体でやろうとする方が多くなってしまうので、そうすると熱量の火が広がらず、すぐに消えてしまって「コミュニティは失敗だ」となってしまうからです。

出典:「コミュニティマーケティングの本質と、2020年におこる3つのこと」小島英揮氏



小父内:やはり最初の火のつけ方が大事ということですよね。
僕もオフラインのイベントを年間数十本のペースで開催していますが、あの空間、時間をみんなで共有することが本当に大事だなと感じます。特に今は、オフラインができない状況なので強く思いますね。

あとは、参加するメンバーの細かな所作や雰囲気も直接対峙しないと情報量として不足するなと思います。立ち上げフェイズではその辺りを含めたコミュニティ文化の醸成が不可欠ですよね。

小島:今のオンラインでのコミュニケーションがメインとなった状況でも、ある程度立ち上がったコミュニティを維持したり、新しい方法でもっとその熱量を外に広げていくことは問題なく行えると思います。

一方で、オンラインで一からコミュニティを立ち上げるのは、オフラインから始める以上にコミュニティマネージャーやマーケターの力量が問われるので、非常に難しいというのが正直な考えです。

ただ、オフラインが出来ないから、コロナの収束まで待つべきだというわけではなく、オンライン時代にあった火のつけ方を考えないといけませんね。

小父内:そうですね。これからコミュニティを立ち上げる状況であっても、今まで顧客に向き合ってきている。つまり「コミュニティ」という形でなくても、1対1の繋がりや絆があるとしたら、それをオンラインで発火させて、コミュニティとして束ねることは可能だと思います。でも、それがないのにオンラインでいきなりアプローチするのは難しいですよね。相手にとっても自分にとっても何より大切な”信頼”がないわけですから。

小島:ただ、オンラインでも既にオフラインで知っている人からの紹介だと大丈夫でしょう。オフライン起点で出来た既存のトラストチェーンを使って繋がることは十分可能ですよ。

その場合も、既に繋がっている人からワンホップで到達できる近さでないと難しいと言えますね。

これからのコミュニティ

小父内:今年も含め、将来的な視点でみたときに、「これからのコミュニティ」はどうなるのか、小島さんの現在のお考えを聞かせてください。

小島:今後、コミュニティには大きく三つの潮流があると思います。
1つ目は、コミュニティをつかった新しい接点づくりへの関心の高まりと共に、コミュニティ運営支援のニーズが増加するというものです。

2つ目は、コミュニティが簡単に出来て、すぐに効果が出ると思っている誤った期待値を持つ人が増えすぎて、それは難しいという現実に直面することによっておこる「幻滅期」です。

最後はハイタッチ、ロータッチ、テックタッチそれぞれのジレンマ(ハイタッチは影響力があるがスケールしづらい、テックタッチはスケールするが影響を及ぼしづらい)から、どの層にも近くにいる人が教えてくれる「ヒューマンタッチモデル」が重要視されるというものです。このヒューマンタッチはベンダーからではなく、コミュ二ティ経由で行われることが多くなるはずなので、「コミュニティタッチ」と言い換えてもよいでしょう。

出典:「コミュニティマーケティングの本質と、2020年におこる3つのこと」小島英揮氏

この3つに加えて、いま避けて通れないのが「オンライン前提社会への対応」ですね。これはネガティブにとらえるよりも、ポジティブサイドに注目した方がいいと思います。

カスタマーサクセスにおけるコミュニティの役割が増大
出典:「コミュニティマーケティングの本質と、2020年におこる3つのこと」小島英揮氏



小父内:オンラインでは距離感が変わって、今まではオフラインではありえない距離感の人同士でも瞬時に交じわりあえるという世界観は、コミュニティにとって非常に面白いですよね。

小島:「オンラインで、オフラインが持っていた共感力をどう再現するのか」というのが大きなテーマにもなりそうですね。

ちなみに僕は、オフラインとオンラインの橋渡しをする要素として、「アクティブ(能動性)」、「リアルタイム(同時性)」、「インタラクション(双方向性)」の3つがあると思っています。

これが実装できる場であれば、オンラインでもオフライン的雰囲気やファシリテートが可能になると思いますが、アクティブ、つまり能動的な参加をどう起こすかが難しいところですよね。

小父内:今、僕の中には「クロスさせる」というテーマがあります。例えば、名刺アプリEightのコミュニティとfreee株式会社マジカチでコラボイベントをやろうとしています。

この先クロスさせることでシナジーが生まれる「クロスコミュニティ」のモデルが凄く隆盛するだろうなと思っています。誰も損しない、参加者全員がハッピーになるモデルです。コミュニティそれぞれの強みを掛け合わせることで想定を超える化学反応が起こる時代がくると予想しています。

小島:小父内さんのいうクロスコミュニティには、両者の橋渡しをする共通の関心軸がありますよね。
それを言語化して軸として打ち出す、いわゆる「コンテキストファースト」が出来れば、ピンときた人だけではなくて、自覚的じゃない人も巻き込んで新しい場を作ることができるかもしれないですね。

僕がいつも言っているコミュニティマーケティングに重要な要素はこの「コンテキストファースト」に加え、「オフラインファースト」「アウトプットファースト」の3つですが、この中でオフラインファーストが物理的に難しくなっている状況下では、残りの2つをもっと強化していかなければならないですね。

このあたりの重要性については、ブログでも深堀して書いてみたので、補足として読んでいただければと思いますが、大事なことは時代で変化するルールにどう対応し、新しいフォーマットを生み出していくか、という事かと思います。

小父内:はい、本当にその通りだと思います。コミュニティも新しい時代に突入しているんですね。あっという間に時間がきてしまいました。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。



CXin編集部:今回の対談は当初オフラインを予定していましたが、新型コロナウィルスの影響を鑑みて急遽リモートでの特別対談にご協力頂きました。編集後記に代えて、小父内氏に対談の感想を伺いました。

小父内:今回の小島さんとの対談もオンラインで実施しました。オンラインでの対談は初めての体験でしたが、思っていたよりスムーズであっという間に時間が過ぎてしまいました。今日の話で改めて確信を得たのは、時代に適応したコミュニケーションの姿があるということです。

そしてダーウィンの有名な言葉にあるように、「唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」

これは、コミュニティにもまさに当てはまる概念です。コロナウィルスの影響でオフラインで会うことが難しくなった一方で、距離を超えた出会いを無制限に生みだすことが出来るようになったとも言えます。だからこそ、そこに集う目的や共通の関心事がすごく重要になります。多くの選択肢がある中で、なぜそこに集うのか?コミュニティの真の姿が問われる時代になっていくのだと感じました。

小父内信也

株式会社Asobica CCO
2010年、名刺管理システムのSansan株式会社に入社。データ化部門責任者を経て、名刺アプリEightのコミュニティマネージャーへ。現在は、株式会社AsobicaにCCOとして参画中。

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