カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)|重要性と実践方法を解説

2023-09-27 コラム

質の良いマーケティングにおいて「カスタマーエクスペリエンス」という要素は重要な事柄の1つです。ビジネスパーソンとして、この言葉の意味や重要性はしっかりと押さえておきましょう。そこで、カスタマーエクスペリエンスの意味や実践方法などについて解説します。

カスタマーエクスペリエンスとは

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「カスタマーエクスペリエンス」とは、「顧客体験」とも表現される、顧客が商品やサービスに対して興味を持ってから利用するまでの一連の体験のことをいいます。

商品やサービスの物質的・金銭的な価値だけではなく、商品やサービスの購入前の販売促進〜購入後のサポートまで、自社の商品やサービスに関連する顧客が体験するすべての事象が対象となります。

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UX(ユーザーエクスペリエンス)との違い

カスタマーエクスペリエンスと似た言葉がいくつかあり、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」は特に混同しやすい概念の1つです。

ユーザーエクスペリエンスとは、ユーザーが商品・サービスを通じて得られる体験のことを指しています。カスタマーエクスペリエンスが商品・サービスに関するすべての体験をターゲットにしているのに対し、ユーザーエクスペリエンスはある商品・サービスの使用から得られる体験に限定しています。

要するに、カスタマーエクスペリエンスの中に、ユーザーエクスペリエンスが位置していると解釈するとわかりやすいですね。

CS(カスタマーサティスファクション)との違い

同じく似ている概念の1つに「CS(カスタマーサティスファクション)」があります。

カスタマーサティスファクションとは「顧客満足度」と表現することもあり、文字通り顧客が自社の商品・サービスに対してどの程度の満足度を感じているかを数値化して表現したものです。

カスタマーサティスファクションは、企業側の誰が顧客と接するか、立場の違いによって内容が変化するという性質があります。例えば営業担当にとっては「接客の質」などがこれに該当しますが、商品を開発する立場からすれば「いかに高品質な商品を提供できるか?」が問われるのが一般的です。

一方でカスタマーエクスペリエンスは顧客が商品と接する全ての体験をターゲットにするため、総合的な評価を測るうえではこちらの方が重視されるべきです。

カスタマーエクスペリエンスの分類

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次に、カスタマーエクスペリエンスを分類する際の、5つの分類について解説します。

SENSE(感覚的経験価値)

1つ目の分類は「SENSE(感覚的経験価値)」です。これは、五感を通じて得ることができるものによってもたらされる価値のことを指します。

例えば、レストランで食事をするシーンを思い浮かべてみてください。「食事」という特性上「味覚」のみが考えられがちですが、五感すべてに視野を広げてみると以下のような内容になります。

  • 味覚:料理や飲み物が美味しい
  • 嗅覚:料理や飲み物の香りが良い、空間全体の香りが良い
  • 視覚:食器や家具などの見た目が良い
  • 聴覚:室内のBGMが雰囲気に合っている
  • 触覚:食器やテーブルクロスなどの肌触りが良い

このように、提供する料理の品質以外にも、五感すべてに訴えかけるさまざまな工夫により顧客の満足度を高めることができます。

FEEL(情緒的経験価値)

2つ目は「FEEL(情緒的経験価値)」です。これは、ユーザーの感情に働きかけて生み出される価値のことを指します。

この分類は、商品やサービスの品質に依存するケースよりも、接客などに依存するケースが多いです。例えば接客時に親切に対応したり、細かい気配りや親身な対応などにより、顧客は情緒的な価値を感じます。商品が持っている価値には依存せず、顧客と接する担当者の質に依存することになります。

この分類による顧客の満足は、顧客からの信頼を獲得できる効果もありますが、顧客の「感動」につながるという側面もあります。感動を覚えた顧客は同じ商品・サービスのファンとなり、リピーターとなって企業に継続的な利益をもたらしてくれる可能性が高まるのです。

THINK(創造的・認知的経験価値)

3つ目は「THINK(創造的・認知的経験価値)」です。これは、ユーザーの知的好奇心や探求心を刺激して生み出される価値のことを指します。

例えば、新しい技術を使用している商品・サービスは、機能的な価値を持つケースが多いです。しかし、ユーザーはそれとは別に「この商品・サービスを使って何ができるのかな?」という、好奇心をくすぐられるという価値を感じる可能性があるのです。

この分類による価値観は、対象となる商品・サービスの技術などの創造的な価値を生み出す源泉が、いかに革新的で魅力的であるか、その度合いにより価値の大小も大きく異なります。中には利便性に直結しない技術などの価値もありますが、この分類による価値は基本的に技術がもたらす利便性や操作性に依存せず、いかに「ユーザーをワクワクさせられるか?」に依存するため、宣伝の仕方などにも依存することになります。

ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)

4つ目は「ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)」です。これは、日々のライフスタイルに変化を起こすことで発生する価値のことを指します。

3つ目の価値「THINK(創造的・認知的経験価値)」とは逆に、対象となる商品・サービスによる利便性や操作性の高さが、この価値を左右することになります。例えば「この新商品を使えば、今まで10分かかっていた調理が5分で完了する」というように、時短や操作性の向上など、生活に直結するものであるほどに価値を高めます。

とくに「ユーザーが日ごろから悩んでいるポイントを改善できる」という特徴を有していると、この価値は高まる傾向にあります。そのため、この価値を高めるためにはユーザーの悩みを解消できる機能・操作性を有している商品・サービスを打ち出す必要があり、ユーザーへのアンケートなどによりユーザーの悩みを把握することが求められます。

RELATE(準拠集団や文化との関連づけ)

5つ目は「RELATE(準拠集団や文化との関連づけ)」です。これは、集団に対する帰属意識に関連して生み出される価値のことを指します。

例えば「ファンクラブ」などの会員制サービスを提供することが、この価値に関係します。ファンクラブに入会することでさまざまな特典を得られるという満足感だけでなく、「入会していない人よりも商品やサービスに詳しいんだ」という意識を得られ、これが帰属意識という価値につながるのです。

この価値を高めるためには、入会することにより「他のサービスでは得られないメリットがある」ことを強調する必要があります。費用対効果をしっかりと考慮できれば、継続的に利益を高め続けることができる可能性が高まります。

カスタマーエクスペリエンスを意識する3つのメリット

カスタマーエクスペリエンスを意識する3つのメリットのイメージ画像

次に、カスタマーエクスペリエンスを意識することによって得られる3つのメリットについて解説します。

リピーターの獲得を狙える

1つ目は「リピーターを獲得できる」ことです。

カスタマーエクスペリエンスを意識することは、顧客の満足度を高めることにつながります。顧客の満足度が高いカスタマーエクスペリエンスを提供できれば、「ファン」を増やすことにつながるのです。

商品・サービス・ブランドのファンになれば、おのずと「リピート率」を高めることになります。同じ商品・ブランドを繰り返し利用してくれることにより、継続的・安定的な利益の確保につながるのです。

口コミによる波及効果が狙える

2つ目は「口コミによる波及効果」です。

新規顧客を獲得するためには、既存顧客の維持と比べると5倍のコストがかかるという「1:5の法則」という考え方があります。つまり既存顧客の維持の方が低コストで実践できるのですが、事業の成長には新規顧客の獲得を無視することはできません。

カスタマーエクスペリエンスを意識することにより、既存顧客のロイヤリティを高めることができます。ロイヤリティ化した既存顧客はSNSなどを用いて「良い口コミ」を広めてくれるのです。昨今、口コミの影響は一層高まっており、カスタマーエクスペリエンスを意識することにより良質な口コミが拡散することで、コストをかけずに商品・サービスの宣伝ができ、新規顧客の獲得につなげることができるのです。

ブランド乗り換えのリスクを抑えることができる

3つ目に「乗り換えリスクを減らすことができる」というポイントです。

企業間競争が激化している現代、自社サービスと競合する他社への乗り換え防止は無視できない要素の1つです。カスタマーエクスペリエンスの質を低下させることは、そのまま他社への乗り換えリスクを高めることに直結するのです。

カスタマーエクスペリエンスを意識することは顧客の満足度を高めることとなり、自社サービスの継続的な利用につながります。特に「サブスクリプション型ビジネス」においては死活問題であり、LTV(顧客生涯価値)を最大化するためにはカスタマーエクスペリエンスを意識することは避けて通れない道なのです。

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カスタマーエクスペリエンスを向上させるポイント

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最後に、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための5つのポイントを解説します。

ミッションステートメントを定義する

1つ目のポイントは「ミッションステートメントの定義」です。ミッションステートメントとは、企業の経営理念や社訓などの共有する価値観を、実際の行動方針に具体化する声明を意味します。

カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには、ミッションステートメントを明確に定義し、それを社内で共有して社外に発信することが重要です。ミッションステートメントを顧客に理解してもらうことは、商品やサービスのブランディングや、顧客獲得のきっかけになるというメリットがあります。

現状・課題を把握する

2つ目のポイントは「現状と課題について把握する」ことです。

カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには、体験のそれぞれの段階でどのような課題があるのかを把握することが重要です。購入時や購入後の使用の段階における顧客体験がどのような状況で、改善すべき課題が何であるのかを明確にします。

カスタマージャーニーマップを使って考える

3つ目のポイントは「カスタマージャーニーマップの活用」です。カスタマージャーニーマップとは、顧客の行動を可視化する手法の1つです。

カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには、ユーザーの行動を理解することが重要です。現状と課題を把握したうえでカスタマージャーニーマップを作成し、これを社内で共有します。社内で現状と課題についての認識を共有でき、改善のための方向性を統一することができます。

数値目標を設定する

4つ目のポイントは「数値目標を設定する」ことです。

具体的な数値目標を定め、そこから逆算する形で行動計画を設定することが効率的にカスタマーエクスペリエンスを向上させるコツとなります。具体的な数値目標を設定しないと、必要な投資や検証が難しくなり、カスタマーエクスペリエンスの向上も曖昧な結果しか生み出せないでしょう。

仮説・検証を繰り返す

5つ目のポイントは「仮説と検証を繰り返す」ことです。

課題に対してどのような原因があり、どういった対策をおこなえば効果が出るのかを予測します。その対処法を実践したうえで、その結果について検証し、その結果を踏まえ新たな仮説を立てて検証する。このプロセスを繰り返します。

一般的に、最初に立てた仮説が100%正しいという結果になることは極めてまれなケースです。仮説と検証を何度も繰り返すことで正しいアプローチに近づき、カスタマーエクスペリエンスの向上につながるでしょう。


cxin

株式会社Asobica cxin編集部。
コミュニティやファンマーケティングに関するノウハウから、コミュニティの第一人者へのインタビュー記事などを発信。

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